投資と費用-その2.政権交代/「同じ」と「違う」(17)
スーパーコンピュータ開発に関する事業仕分けが科学技術関係者などの批判を招き、予算としては復活しそうな成り行きである。
特に、理化学研究所の野依良治理事長の「科学技術振興や教育は投資であって、費用と混同して考えてはならない」という発言がかなりの影響力を持ったようだ。
確かに、投資と費用は別の概念であろう。
しかし、考えてみれば、ダムの建設も道路の建設もすべて投資として考えるべき問題ではないか。
これらの公共事業は、まさに産業や生活の基盤整備事業であって、長期間にわたる受益を前提にしている。
およそ公共事業の多くは、投資として行われるものであろう。
その意味で、事業仕分けにおいて、投資と費用とを区分して考えるべきだ、という論理は成立しがたい。
事業仕分けの進め方について、多くの批判を耳にする。
私などは、自公連立政権時代と比べれば、大きな前進ではないかと思うが、もちろん現在の方法や状態に欠陥がないということではない。
変えるべきは変えていけばいいだろう。
今年の新語・流行語大賞は、「政権交代」だそうだが、政権交代自体が、一種の投資と考えるべきだろう。
多くの国民は、決して一過性の流行現象として選択したわけではないと思う。
長期政権の後で、直ちに交代の効果を求めれば、拙速という結果に陥ることになるだろう。
政権交代の費用はもちろん発生するであろうが、重要なことは、投資と位置づけて、長期的な効果をいかにして発現させていくかだと考える。
一般論として、投資に不確実性はつきものである。
不確実性を前提として、意思決定を行わざるを得ない。
ハイリスクのものはハイリターンを期待するし、ローリターンしか期待できないとすれば、ローリスクの道を選ぶだろう。
ハイリスク・ハイリターンがあるレベルを超えると、投資というよりも投機と呼ぶべき領域に入ってくる。
もちろん、その境目のレベルは、手持ち資金の余裕度等によって変わってくるだろう。
私は、国民は、ある程度のリスクを織り込んだ上で、政権交代という選択肢を選んだのだと思う。
投資に際しては、長期的な目論見が重要である。
民主党政権は、日本という国の長期的な展望を示していない、という批判がある。
それも、自公政権との対比で言えばどうなのか、という気がするが、長期的な方向性の提示は、投資、すなわち多くの事業仕分けの判断の基礎になるものである。
政権交代が先に現実化してしまったわけであるが、この国の将来像については、これからでも遅くはないので、議論を重ねていくべきだろう。
しかし、例えばダム問題をとっても、将来的な水循環の望ましい姿などは、そう簡単には描けないのではなかろうか。
とすれば、現時点で、何らかの見切りは止むを得ないのではないかと思うのだが。
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