旧長銀と旧日債銀/「同じ」と「違う」(18)
旧日債銀(現あおぞら銀行)の窪田弘元会長、東郷重興元頭取ら3人が、粉飾決算の疑いで証券取引法違反の罪に問われた事件で、最高裁判所は12月7日、3人を有罪とした高裁の判決を破棄し、審理を差し戻した。
同様の構図で争われた旧長銀の場合には、最高裁は無罪判決を下している。
2008年7月19日 (土):旧長銀粉飾決算事件
しかし、旧長銀粉飾事件は、意外な内容を包蔵した事件だった。
第一に、破綻時の債務超過額約2兆6535億円という巨額の損失の責任が、結果として曖昧になってしまった。
先日、朝のTVで、鳩山内閣は2009年度2次補正予算に盛り込む総額をめぐって、国民新党が規模の拡大を求めていた案件が、1000億円の上積みで決着したことの解説で、「1000億円」の物理的な大きさを模型を作って示していた。
重さでいえば、1万円札で約10トンということである。
旧長銀の債務超過額は、その26倍以上だから、まあ普通の人の感覚を超えている。
10年間かけた司法的判断の結果が、無罪ということであった。
しかも、この無罪は、「粉飾はあったが、不法性はなかった」という、いささか分かりにくい判断の結果であった。
2009年1月26日 (月):長銀粉飾決算事件再考
2009年1月27日 (火):長銀粉飾決算事件再考②
この年の決算(平成10年3月期)においては、一般の上場企業に適用されていた「企業会計原則」と、旧大蔵省銀行局による「統一経理基準」が併存していたのであった。
そのような事情のもとに、旧長銀の経営陣には無罪判決が下された。
ところが、旧日債銀については、審理の差し戻しであって、高裁の有罪判決は棄却されたものの、無罪の結論が得られたわけではなかった。
日債銀も、旧基準ともいうべき「統一経理基準」によって決算を行った。
このことについては、最高裁は旧長銀の場合と同じように、違法性があるとはいえない、という判断である。
それでは、旧長銀の場合と、旧日債銀の場合とでは、何が異なるのであろうか?
旧長銀の場合、融資先は、第一ファイナンス、NED関係、日本リース関係等の関連ノンバンクが中心であった。
これらの貸出先は、一般貸出先と区分されていて、この身内の貸出先については、引当・償却処理を行わないことによって、損失を軽減する措置をとった。
この措置について、母体行は関連ノンバンクを積極的に支援するように求められており、追加支援策が予定されていれば、事業好転の見通しがないとはせず、回収不能とは評価できない、ということである。
これに対して、旧日債銀の融資先は、第一コーポレーションやどの独立系のノンバンクなどであり、「一般取引先」が主体であった。
つまり、母体行による支援が求められる貸出先ということではなく、回収可能性の判断は、合理的な再建計画や銀行による追加支援などを、旧基準に従って判断するとどうか、という問題である。
差し戻し審では、これらの観点から貸し出し経緯などを再検討することになる。
差し戻し審がどのような判断になるかを現時点で予測することは難しいが、高裁でも、既に貸し出しの経緯等について検討した結果でもあるので、旧経営陣にとって厳しい局面もあり得るのではなかろうか。
しかし、旧長銀の場合も、関連ノンバンクの先は、結局は「一般貸出先」であるので、間にクッションがあるかないかで判断が異なるというのも奇妙な感じがする。
長銀の方が、不良債権を巧妙に偽装したとも考えられるのではなかろうか。
しかし、今さら当時の事情を掘り返してみても、虚しい思いがするのは私だけではないだろう。
私は、以前の会社において、旧長銀の人とも、旧日債銀の人ともお付き合いをさせて頂いたことがある。
もちろん、ごく限られた人であるから、それを一般化できないとは思うが、敢えて言えば、長銀は優等的で、日債銀は野人的であった、という印象を持っている。
いずれにしろ、ある種の国策を担った銀行であり、時の流れを感じざるを得ない。
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コメント
こんにちは、突然お邪魔します。 民主党が政権交代して、よい事もありますが、外交や安全保障は混乱しています。
そして民主党内の旧社会党議員は「外国人住民基本法」を通そうとしています。
この法案は3年間不法にでも滞在していれば、選挙権や生活保護を日本人と同じに与えようとするものです。
そして5年間の不法滞在で,国籍まで与えようとしています。あまりにも優遇しすぎます。
今の不況下、お金を使うなら我々のために使って欲しいものです。
もし、あなたの、あるいは将来のお子さんの事をお考えなら、ぜひ下の語を検索して調べてみてください。 失礼しました。 松田
投稿: 松田明 | 2009年12月11日 (金) 14時51分