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2009年11月 7日 (土)

水銀の化学(12)分子軌道と化学結合

西村肇、岡本達明『水俣病の科学 』日本評論社(0106)において、西村氏は、電子が走る軌道を図解している。
Photo 電子軌道には、次の3つの状態がある。
1.空状態(電子0)
2.単占状態(電子1)
3.複占状態(電子2)
面には表と裏がある。軌道が表にある場合が位相が正、裏にある場合が負であり、これが位相である。
図のように軌道の考査の前後で位相が反転する。

この電子軌道が2つ重なったとき、同位相だと引力になり、逆位相だと斥力になる。
原子Aは軌道aを、原子Bは軌道bを持っているとする。
Photo_2aには電子が1個右回りに、bには1個左回りに流れている。
図(1)のように、AとBが近づいて軌道が交差した状態を考える。
交差した後の軌道は、(2)のようになる。
もし、bの向きが逆で、交差するのが転戦軌道の場合には、電子の流れは(3)のように軌道が2つに分かれてしまう。

(2)と(3)は、ともに2つの電子が流れているが、電子の平均的な位置に大きな違いがある。
a、bが離れている場合には、2つの電子の平均的位置は、それぞれの原子核A、Bの上にあり、核の電荷と電子の電荷が打ち消し合って、外には力を及ぼさない。
(2)の場合には、2つの電子がA、Bの中心に寄り、(3)の場合には中心に電子がいる割合が小さくなって結果的に核の外側に来る。
電子が核の内側にあるときは引力が働き、外側にあるときは斥力が働く。

電子が0の空状態の場合には、電子の軌道そのものが存在しないことになり、引力は働かない。
また、電子が2個ある複占状態の場合には、軌道が交差しても他の軌道から電子が流れ込む余地がないので、結合には関与しない。

つまり、中学校段階で教えられる結合手とは、電子が1個だけ入った単占状態軌道ということになる。
この場合、軌道と軌道が重なると結合が起こる。つまり、電子対が生成する。
既に電子対ができている場合は複占軌道であって、結合に関与できないない。

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