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2009年11月30日 (月)

投資と費用/「同じ」と「違う」(15)

鳩山内閣の行政刷新会議の行った事業仕分けが幅広い関心を集めた。
来年度(平成22年度)の予算概算要求は95兆円に膨張しており、現在の財政事情からすれば、大幅な圧縮をせざるを得ない。
何を残し、何を削るのか?

事業仕分けの考え方は、図のように説明されている。
Photo 図は、産経新聞11月12日。

この考え方、論理の道筋は、当たり前のことのように見えるが、その認識を国民が改めて共有することは意味のあることだろう。
予算の原資が限られている以上、項目の優先順位の査定は不可避である。
今まで財務省と各省庁との間で行われきた折衝を、オープンに論議しようということであり、評価すべき試みだと考える。
しかし、十分な審議が尽くされていない、という印象も拭えない。
しかし、この仕分け作業が最終決定ということでもないので、関心を集めたことを出発点として評価すべきだろう。

個別にみればもちろん、「それでいいのか?」というクエスチョンマークを付けたい項目はある。
もちろん、それは人それぞれに異なるものであろうから、最終的には多数決によって決めざるを得ないだろう。

論議を呼んだものの1つに、「次世代スーパーコンピュータの開発予算」がある。
行政刷新会議の事業仕分けでは「事実上の凍結」と評決された。
これに対して、科学技術の専門家側から、強い批判が寄せられている。
スーパーコンピュータの開発は、理化学研究所が主体となっている。
理事長の野依良治氏は、ノーベル化学賞の受賞者として著名な人であるが、「不用意に事業の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と激烈に批判している。

スーパーコンピュータ開発予算の事業仕分けの際に、仕分け人の蓮舫参院議員が、「世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのですか」と発言し、評決の趨勢を決めた様子の映像が繰り返し放映され、事業仕分けを象徴する案件となった。
この発言が独り歩きし、蓮舫氏が科学技術に理解を示さない人であるかのように報道されもしている。
もちろん、2位よりも1位がいいに決まっている。
しかし、蓮舫氏も、「世界一であるべき、その説明を求めたのに……」といささかトーンダウン気味である。

言うまでもなく、事業仕分けに「聖域」はあり得ないだろう。
「聖域」を設けるならば、最初から仕分けの対象から除外すべきだということになる。
事業仕分けの対象とするとしたら、蓮舫氏の問いかけは、ある意味で当然ではないだろうか。
どうしても1位でなければならない理由は何なのか?

スーパーコンピュータの開発は影響の裾野が広いからか?
しかし、それとても定量的に評価できるものではないだろう。
つまり、問題は予算が付いた場合と削除された場合の「効果と影響」の想定である。
野依氏は、「科学技術振興や教育はコストではなく投資だ」としている。
確かに、これらの分野への支出は長期的な効果を求めるものであるから、投資と考えるべきだろう。
それでは、これらの分野への投資の評価方法論は確立しているのだろうか?

企業の場合には、その投資によって得られるであろうリターンを想定し、ROI(投資収益率)などを比較考量して投資の是非を判断するだろう。
しかし、科学技術振興や教育や文化などは、そもそも経済的評価に馴染まないのではないか。
また、投資と効果の関係すら不分明ではないだろうか。
いくら精緻な予測を行っても、それは精々意思決定の判断のための参考材料に過ぎないだろう。
結局は、国の財政事情、言い換えれば国力、に応じた投資を政策的に決定するしかないのではないかと思う。

例えば、敗戦直後のような状況では、いくら科学技術振興の重要性を訴求しても、先ずは食糧の確保を優先しなければならなかったのではないか。
文化的なものへの投資も、衣食足りて後のことだろう。
私もノーベル賞学者を尊敬する心において人後に劣らないつもりである。
しかし、だから特権が付与されているというものでもないのではないか。
予算配分は、まさに政治家が見識を賭けて取り組むべき問題だと思う。

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コメント

野依さんの「不用意に【事業】の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と激烈に批判を聞いて。⇒私には「不用意に【天下り】の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と聞こえました。理由は「野依さん」=天下りが13人いる「理研」のトップ・理事長だからです。

投稿: 天下り | 2009年12月 1日 (火) 23時14分


「歴女」から「武士女」へ

検索“修行”しておりました道中、貴HP(道場)へ立ち寄った者にて候。
突然のお知らせ(書き込み)にて御免!
現代の女性に求められる「女性の品格」の源は武士の妻女の品格、気品です。
武道通信http://www.budotusin.net
へ御立ち寄りくだり、『武士の女の品格』をお読みいただければ幸いです。

投稿: 武道通信  | 2009年12月 5日 (土) 08時33分

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