水銀の化学(13)アセチレンの三重結合の分子軌道
分子軌道は、軌道が原子に所属するのではなく、原子と原子の結合そのものに所属すると考える。
2つの軌道が重なってできた新しい軌道は、2つの原子A、Bのどちらにも所属せず、AとBの間の結合そのものに所属する。
原子Aと原子Bの所属していた2つの軌道が、AとBの間に、結合性と反結合性の2つの軌道に変換したわけである。
アセチレンの三重結合への金属の結合を考える。
炭素の電子の走る軌道には、s軌道とp軌道とがある。
s軌道が重なって結合したものがσ軌道であり、p軌道が重なって結合したものがπ軌道である。
三重結合は、1本のσ結合と2本のπ結合から成る。
炭素には、s電子の他に、p電子が2個ずつ残っている。
炭素原子が近づいて軌道が交差すると、分子軌道が形成される。
分子軌道は、p軌道の配置が同じ向きか逆向きかによって、結合性(2)か反結合性(3)になる。
p軌道は、炭素と炭素を結ぶ軸をz軸とすると、x軸方向、y軸方向に伸びている。
つまり、x軸方向とy軸方向に、2個のπ結合が生成する。
つまり、それが三重結合が1個のσ結合と2個のπ結合とから成ることの意味である。
σ結合は、炭素と炭素の結合軸上に形成されるが、π結合は、軸から少し離れたところに形成される。
そlの分、π結合は反応しやすい、ということになる。
水銀イオンはπ結合に結合する。
原子内の電子のうちで結合に関与するのは最外殻の電子である。
2価の水銀イオンの最外殻には18個の電子を持っている。
最外殻の電子には、s軌道、p軌道、d軌道がある。
d軌道が一番外側に出ていて結合や反応に関係するのはd軌道である。
d軌道には立体的な形が異なる5個の軌道があるが、結合に関係があるのは、π結合と同じ対称性を持つ軌道である。
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