水銀の化学(4)医薬品としての有機水銀化合物
水俣病とメチル水銀の関係で、有機水銀化合物には、すっかり「悪役」のイメージが染み付いてしまった。
有機化合物とは、基本的には、炭素原子を構造の基本骨格に持つ化合物の総称であるが、グラファイトやダイヤモンド、二酸化炭素、炭酸カルシウムなどは、無機化合物とされる。
「有機的=organic」というのは、生物由来の、という意味と解していいだろう
有機物を構成する基本的な単位、つまりモジュールのことを官能基(functional group)という。
水銀に、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボニル基などの官能基が結合した化合物が、有機水銀化合物である。
これまでに数多くの有機水銀化合物が合成され、利用されてきた。
医薬品として利用されてきたものも多く、赤チンとして知られるマーキュロクロム液の原料のマーキュロクロムもその1つである。
医薬品として用いられてきた有機水銀化合物の例には、次のようなものがある。
図は、日本化学会編『嫌われ元素は働き者 #一億人の化学# 』大日本図書(9203)。
マーキュロクロム液は、かつては一家に一瓶の万能傷薬だった。
酢酸フェニル水銀は、殺菌剤として利用されたほか、殺精虫作用を持つことから、避妊薬として用いられたという。
チメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)は、微量でも強い殺菌作用があるため、予防接種液(DPT、日本脳炎など)中に防腐剤として添加されてきた。
エチル水銀は腸管から積極的に排泄されるため、7日以内で血液中の量は半減するが、水俣病の原因になったメチル水銀は血液中の量が半減するのに1.5ヶ月(約45日)もかかる。
アメリカでは、予防注射中のチメロサールが原因で自閉症になった、という訴訟が続いているが、現在チメロサールが自閉症を引き起こすという証拠(エビデンス)は全くない、といわれている。
水銀の悪役イメージには、誤解も多いようである。
マーサリル、メルカプトメリンナtリウムは、利尿作用がある。
腎臓で一部が分解して発生した水銀イオンが、ナトリウムイオンや塩化物イオンの再吸収のために作用する酵素に結合して阻害することによって、利尿作用が起きるとされている。
有機水銀系医薬品は、水銀による副作用との兼ね合いが問題視される。
チメロサールのように、エビデンスが明確でないものもあるが、医薬品としての水銀化合物は次第に使われなくなってきている。
日本の薬局方からはほとんどが削除されている。
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