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2009年10月 7日 (水)

今年のノーベル物理学賞と西澤潤一氏の研究

今年のノーベル物理学賞は、光ファイバーによる情報通信への貢献を評価された元香港中文大学長のチャールズ・カオ博士と電荷結合素子(CCD)センサーの発明を評価されたウィラード・ボイル博士、ジョージ・スミス博士の3人が受賞した。
日本人として気になるところは、「光通信の父」と呼ばれ、国際的にも高い評価を得てきた西澤潤一元東北大学長に賞が与えられなかったことである。
西澤氏が所長を務めていた東北大学電気通信研究所の矢野雅文所長は、「カオ博士より西澤先生の方が早く業績を上げ、国際的にも認められている。選考委員会の評価の仕方が違うのだろうか。残念の一言に尽きる」と、選考結果にいささか不満気である。
しかし、当の西澤氏は、「基本的なことは我々が成し遂げた。(カオ博士に)おめでとうと言いたい」とさほどのこだわりは感じられない。
http://mainichi.jp/select/science/news/20091007ddm003040084000c.html

私なども、「光ファイバーといえば西澤」というように条件反射的に捉えていたので、光ファイバーが授賞対象になるのであれば、西澤氏を外すことについてはいささか疑問を持つ。
西澤氏自身も、ノーベル賞に対する思い入れはあったはずである
以下、『独創は闘いにあり』プレジデント社(8603)の「プロローグ」からの引用である。

そんな気持ちを文化功労者顕彰にこめて、各マスコミのインタビューに答えていた最中のことであった。東京の某新聞社から「先生、ノーベル賞に決まりそうですよ」という電話が飛び込んできた。
「まさか」と思い、文化功労者顕彰の間違いじゃないですか、と応じたのだが、「そんなことはありません。ノーベル賞です」と、電話口からは、力強い記者の声が返ってくる。
いずれにせよ私は文化功労者の栄誉に浴することになった。が、ノーベル賞についてはその後は沙汰やみのままである。
それはそれとして、受話器を通して「ノーベル賞」という言葉を耳にしたとき、奇妙に冷静だったことを覚えている。驚天動地、青天の霹靂だったかというと、それがそうでもなかったのだ。

上記の引用は、要するに「ノーベル賞」にも違和感はない、という自信の表明である。
しかし、西澤氏がノーベル賞の候補になったという噂が流れたとき、陰湿な批判めいた話が伝わってきた、とも書いている。
「候補にもなっていないのに、自分の業績をことさら吹聴している」……
しかし、西澤氏は、一度でも名利のために研究に励んだり、してやったりと勲章を手にしたりということはない、と言う。

上記のように、西澤氏は「光通信の父」と呼ばれている。
「光通信」について、上掲書から、西澤氏自身の解説を引用すれば以下のようである。

「光通信」は、簡単にいえば情報の発信側で電気信号を光信号に変え、その信号を伝送路を通して送り、これを受け取った受信側で光信号を再び電気信号に換えて判読し、情報の伝達・交換を行なう通信システムである。電話その他、従来の電流、電波によって情報を送る通信手段に比べ、きわめて周波数の高い“光”という電磁波に乗せると情報の伝送内容が桁違いに増えるので、夢の通信システムと呼ばれて嘱望されてきたものである。
技術的には、この通信システムの発信側で「電気→光」という交換を可能とする発信装置、その光信号を送る伝送媒体、そして受信側で「光→電気」の変換をする受信装置の、三つの要素が必要不可欠となってくる。
その光通信の三要素すべてについて、私が基本的な発明をする機会にめぐりあわせた。

西澤氏は、上記のように自他ともに認める「光通信の父」であるが、自分自身としては、半導体づくりのための結晶化技術により長く深く係わってきたという思いがあるようである。
西澤氏の最初の特許取得は、昭和25(1950)年のPinダイオードだという。
このダイオードを実現するために、半導体結晶を徹底して研究した。

半導体は文字通り導体と絶縁体の中間的な性質を有するもので、電子回路の中で「整流作用」や「検波作用」などの機能を持つ。
最近は化合物半導体が主流で、高純度のシリコンに、砒素、燐、インジウム、ガリウムなどの元素を混合して、所要の特性をもった半導体材料をつくる。
LED(発光ダイオード)もその1ジャンルである。
ガリウムや砒素などの元素を組み合わせて作った化合物半導体が、発光しやすい性質を持っていることを利用したもので、最近では照明用として省エネへの貢献が期待されている。

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