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2009年9月 4日 (金)

自由民主党・自壊の構造

今回の総選挙の結果について、民主党の勝利というよりも、自由民主党が自壊した結果という印象を持つ人が多いのではなかろうか。
私自身も、自民党が自壊したと思うし、それが歴史的な転換を意味しているとも思う。
もう30年以上も前のことになってしまったが、リサーチャーに成り立てだった私に、見慣れぬ著者名の一冊の本が紹介された。
菊入龍介『日本経済・自壊の構造』日本実業出版社(7311)である。

第一次石油危機が起きたのが1973年10月のことだから、その直後の刊行である。
石油危機発生の以前から、すでに『成長の限界―ローマ・クラブ人類の危機レポート』ダイヤモンド社(7205)などにより、石油を基盤とする現代文明の行き詰まり感が指摘されていた。
そういうこともあって、石油の供給が途絶するかもしれないという不安感が、石油危機のパニックを増幅したのではないだろうか。

菊入氏は、そのような危機感の背景にある事情を見事に分析してみせたのだった。
菊入氏は、危機の本質がハッキリしないときこそ真の危機であるとし、現代(執筆時)の危機は五重構造になっているとした。

第一は、文明論的危機論である。すなわち、近代文明社会が危機に瀕しているということであり、現象的には、公害と人口爆発と食糧危機の問題である。
第二は、資本主義の危機である。インフレ問題、通貨問題、企業活動に関する諸原理への批判などである。
第三は、自民党の危機である。自民党の一貫した得票率の低下であり、タカ派の台頭による分裂の可能性である。
第四は、感覚的な危機論である。社会心理的な危機論といってもいい。
第五は、天災危機論である。異常気象による農業、漁業等へ深刻な影響と、大地震による未曽有の被害の予測である。

実は、菊入龍介というペンネームは、かの立花隆の別名であったのだが、一冊の調査報告書として、目配りや筆力という観点から、リサーチャーとして学ぶべきものが多いだろう、ということで紹介されたのだった。
その後の立花氏の活躍ぶりは今さら言うまでもないが、危機の五重構造という認識は、私にとっては、構造的理解というものの格好の教材のように思えた。

そんなことから、今回の自民党の自壊を、構造的に捉えてみると、どういうことになるだろうか、と考えてみた。
自民党の危機は、上記のように1973年時点で、既に言われていたことであった。
そして、その後、単独での政権維持ができなくなったものの、第一党の立場を維持しつつ、連立を組むことによって政権を維持し続けてきた。
野に下ったのは、細川内閣の約8カ月間だけであった。

しかし、自民党の歴史的使命は、とうに終わっていたと考えるべきであろう。
自由党と日本民主党が合併して、自由民主党が誕生したのは、1955(昭和30)年11月のことであった。
いわゆる55年体制ということであるが、東西冷戦構造を背景として、自由民主党がいわゆる西側、日本社会党が東側勢力という位置づけであった。
時々で多少の変動はあるものの、社会党は自民党の50%程度の勢力だったから、2大政党というよりも、1.5大政党というべき時代だった。

しかし、東西冷戦という背景は、既に1989年に喪失しており、その反映としての日本の政治構造も、当然のことながら対立軸の変化を要請されることになったのだった。
55年体制を戦後レジームというならば、戦後レジームからどう脱却するのかを問われることになった。
しかし、自民党自身が、安倍晋三内閣まで、戦後レジームからの脱却を口にすることはなかった。
89年以降は、旧来的な利権維持装置としてのアンシャンレジームでしかなかったというべきだろう。
それを象徴するのが、密室での取り引きで成立した森喜朗内閣だった。

国民の不満が極度に高まったとき、トリックスターとして登場したのが小泉純一郎氏ということになる。
2009年8月25日 (火):ポピュリズムとトリックスター
手品師のごとく、自民党に対する不満を、期待感に変えて自民党の延命に貢献した。
しかし、構造的に自民党の命脈は既に尽きていたのであり、その後の安部、福田、麻生内閣は、結局は小泉内閣の遺産の食い潰しでしかなかった。
小泉氏の「自民党をぶっ壊す」という言葉が、現実化したということになる。

安倍、福田両内閣が、任期途中で政権を投げ出したことも、国民の失望感を招いた。
そして決定打となったのが、麻生内閣でのさまざまなお粗末な出来事であった。
女性問題でのスキャンダル大臣、朦朧とした状態で国際的な記者会見に臨んだ大臣、「かんぽの宿」譲渡問題等に露呈した構造改革そのものへの疑問など、首相として収束させるべき課題を整理しきれず、自らも漢字の読み間違いや、高所からの目線を修正できなかった麻生首相は、自民党政治に終止符を打つに相応しい人物だったといえるかもしれない。

自民党は、自壊すべくして自壊した。
民主党を中心に、新たなレジームの構築が目指されるわけであるが、寄せ集め集団の民主党に、統一的な国家像を求めるのは難しいように思われる。
環境的には、多重的な危機の構造はさらに深まっていると考えられるので、政界の再編成は不可避なのではないだろうか。

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