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2009年9月12日 (土)

八ツ場ダムの入札延期 その1.計画の現況

国土交通省の谷口博昭事務次官が、群馬県の八ツ場(ヤンバ)ダムの11日から予定していた本体工事の入札延期を表明した。
民主党は、マニフェストにおいて「ムダづかい」をなくすことを第一に挙げている。
その第一として、公共事業における「ムダ」が取り上げられており、「川辺川ダム」「八ツ場ダム」は中止、と明記されている。
時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直すとしており、その代表例として、八ツ場ダムが取り上げられているわけである。

今回の総選挙で民主党が圧勝したことにより、このマニフェストを考慮に入れた国土交通省の判断ということになる。
谷口次官は、新政権の国土交通相に説明した上で、判断を仰ぐとしている。
しかしながら、マニフェストに具体名を明記していることから、本体工事がストップすることは、ほぼ確実と思われる。
時代に合わない公共事業の見直しは当然のことであろう。

ダムなどの公共事業は、計画されてから実施に移されるまでにかなりの時間を要する。
そのため、計画時の諸環境と大きく様相が変わってしまうことがあることは避けえない。
先ごろ開港した静岡空港についても同様である。
というよりも、静岡空港については、計画の時点から疑念があったというべきであろう。
静岡空港便の搭乗率が劇的に改善される可能性があるだろうか?
私は悲観的にならざるを得ない。
赤字のツケは、結局は県民が負担しなければならないのである。

静岡に空港を持つ必然性があったのかどうか?
もちろん、搭乗率向上の努力はしなければならないだろうが、いずれ、ムダな施設だったという評価を下されることになるのではなかろうか。
公共事業は、一度計画され、着手に移されると、往々にしてその遂行自体が目的化してしまう。
八ツ場ダムについていえば、最初の計画発表は、1952(昭和27)年だから、半世紀以上も前のことである。

この間、「反対-賛成」をめぐって、数多くのドラマがあった。
八ツ場ダムの建設予定地は、吾妻渓谷の川原湯温泉のある場所である。
1198(建久5)年に源頼朝が開いたと伝えられているが、多くの文人墨客に愛されてきたら関東の名勝である。
その養寿館という旅館の主の萩原好夫さんという人がいる。
若いころは、日本共産党の活動家でもあったようである。

萩原好夫『八ツ場ダムの闘い』岩波書店(9602)は、多くのことを考えさせられる著書である。
八ツ場ダムの本体工事の入札延期は、「脱ダム社会」の到来を予感させるものである。
「脱ダム」とは、単にダムだけの問題ではない。
「ダム」は、官主導で行われてきた大型公共事業のシンボルである。

私は、公共事業は必要であると考えるし、ダムも有用であると考える。
水資源の安定供給と、洪水被害の軽減は、まさに公共的課題であろう。
問題は、開発利益の配分と費用負担のバランスの問題である。
ダムの場合、水没地域の住民は、まったく新たに生活の再建を図らざるを得ない。
その難易度は、ダム建設予定地とその周辺の土地条件によるが、社会経済的な環境にも大きく影響される。

ダムの受益者は、下流の大都市圏である。
ここに、ダム建設の費用負担者と受益者が、上流と下流という地域間対立となって現れる。
八ツ場ダムについても、受益者である東京都は、すでに457億円を支出しているという。
石原都知事は、建設が中止になれば、今までの支出の返還を国に要求すると意思表示している。

もちろん、計画発表から50年以上の期間、建設予定地の住民は、経済的にも心理的にも多くの負担と圧迫を受けてきた。
その実態は、上掲書で窺い知ることができるが、実際の辛苦を体感することはできない。
八ツ場ダムの問題は、大規模な公共事業においては、計画段階こそ重要であることを示しているように思う。

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