八ツ場ダムの入札延期 その7.政権交代と行政の継続性
鳩山内閣が16日に発足した。
各紙の報道によれば、国土交通相に就任した前原誠司氏は、早速、八ツ場ダムの建設中止を明言した。
国土交通省サイドは、八ツ場ダム建設問題は、新大臣の判断に委ねるとしていたので、事実上建設中止が決定したということになる。
民主党のマニフェストには、川辺川ダムと共に八ツ場ダムの建設中止が明記されていたので、ある意味では当然の判断といえよう。
しかし、これで一件落着というわけではもちろんない。
というよりも、新たな問題の始りと考えるべきだろう。
八ツ場ダムの周辺住民で、ダム建設を前提に、既に移転をしてしまっている人も少なくない。写真(産経新聞090913)で見るように、水没予定地域の川原畑地域では、代替地への墓地の移設を行っている。
墓地こそは、先祖伝来の地の象徴のようなものであり、この段階での中止の決定がさまざまな問題を派生させることは間違いない。
もちろん、前原国交相も、「やみくもに中止すると現場の方々も混乱するので、補償措置について地元の方々や関係自治体とも話し合いたい」と述べている。
新たな制度的枠組みを創設しても、補償には万全を期することが必要だろう。
八ツ場ダムについて、地元の群馬県の大沢知事は、「共同事業者である1都5県の意見を聞かずに建設を中止したのは言語道断で極めて遺憾」とする談話を発表している。
埼玉県の上田知事は、「ルール無視。手続き無視。あってはならないことだ」と猛反発している。
東京都の石原知事は、「負担金の返還を求める」意向を明らかにしている。
つまり、関係自治体は、基本的に建設賛成の立場である。
政権交代による政策の変更は、当然のことである。
しかしながら、住民の生活と密着した行政施策は継続性が求められるだろう。
行政担当者の困惑ぶりが目に浮かぶが、だからこそ計画段階にこそ注力が必要だということだと思う。
当然のことながら、建設反対派は、前原国交相の意向を歓迎している。
建設続行すれば、重大な公約違反となるから、建設中止の方向に進まざるを得ないだろう。
水資源開発については、近年の水需要の動向からすれば、八ツ場ダムが建設されなくても、さほど大きな問題にならないと考えられる。
しかし、ダムありきで検討されてきた地元の生活再建の問題、洪水調節機能の代替をどう考えるかという問題は、今後の大きな検討課題である。
八ツ場ダム建設に関する今までの経緯は、余りにも大きな犠牲を生んだとせざるを得ないだろう。
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