自由民主党・自壊の構造 その2.戦略の不在
自由民主党の自壊は、どのような条件を背景として起こったか?
企業戦略と対応させて考えてみよう。
例えば、「戦略の構図」と呼ばれる図式がある。北矢行男多摩大学名誉教授(前同大学総合研究所長) の考案になるもので、シンプル・ストラテジーを「見える化」させるものとして、多くのプロジェクトで活用されてきた。
この構図に照らして考えてみよう。
先ずは、自民党の「どうなりたいか・どうしたいか」という主体的意思はどうであったか。
1955年の結党以来、例えば憲法改正が立党の基本的な立脚点だったはずであるが、国民世論や世界史の動向の中で、明確に憲法改正を主張することを取りやめてしまっている。
もちろん、憲法改正の主張が支持を広げるとはいえないが、明確な主体的意思が伝わってこない。
結果として、長期政権によって獲得した諸権益を維持したいということが残り、著しく「志」の要素が欠けていることが国民の目に曝されることになってしまった。
郵政民営化を錦の御旗とした小泉政権は、この点において、主体的意思については明確であったといえる。
一方で、構造改革の負の遺産ともいうべき「格差の拡大」という環境条件に関して、議席を獲得した条件でもある構造改革路線を否定するわけにもいかないから、明確な対応をとれず、もちろんパラダイム・シフトも見出されようがなかった。
一方で、マニフェストの作成で出遅れ、内容的にも民主党を差別化できる形にし得なかった。
結果として、自民党の「ビジネス・モデル」は旧態然としたものに留まらざるを得ず、チェンジを求める国民の関心に応え得なかったということになる。
また、戦略検討の最もベーシックなツールとして、SWOT分析がある。
Wikipediaでは、次のように説明されている(09年8月13日最終更新)
SWOT分析(-ぶんせき、SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人の、プロジェクトやベンチャービジネスなどにおける、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) を評価するのに用いられる戦略計画ツールの一つ。
SWOTは、次のような4象限で表される。内部環境的に、自民党はどうであったか?
「かんぽの宿」譲渡問題における麻生首相と鳩山前総務相の対立。
多くの国民は、少なくとも、「かんぽの宿」譲渡のプロセスに関して、疑念を抱いたのではないだろうか?
あるいは、解散間近の時点における中川秀直元幹事長らによる、いわゆる「麻生降ろし」の動き。
自民党は、強みとか弱みをいう以前に、組織としてのガバナンス能力を失っていたと言わざるを得ないのではなかろうか。
リーマンショックなどのように、麻生内閣が、外部環境的に恵まれなかったということもあると思う。
しかしながら、外部環境については、「激変」が常態化しつつあるのであって、その「激変」に柔軟に対応できない組織は、淘汰されざるを得ないのだと思う。
衆議院で圧倒的多数を占めることになった民主党についても、外部環境に柔軟に対応できなければ、直ちに脅威が襲い掛かってくる。
情報化というのは、環境との相互作用が緊密になるということであり、ちょっとした出来事が、思わぬ重要な結果を生むことになる。
つまり、機会と脅威が、短時間で入れ替わり易い時代なのではなかろうか。
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