熱と温度 その1.熱容量と比熱/「同じ」と「違う」(1)
日常的には、体温が平熱よりも高い時に、「熱がある」などというように、熱と温度とは無意識的に混用されている場合がある。
しかし、熱と温度は、密接な関連性はあるが、概念的にはまったく別のものである。
熱は、量的な概念であり、足し算することができるが、温度は状態を示す指標であり、足し算することはできない。
物質は、原子・分子から構成されている。 ある物質が原子・分子から構成されている状態を、模式的に図のように表現したとする。
物質が全体として動いていなくても、物質の内部では原子・分子が動き回っている。
物質に熱を加えると温度が上がる。
温度が上がるということは、原子・分子の運動が激しくなるということである。
http://www4.osk.3web.ne.jp/~moroko/physics(mecha)/heat/heat.html
つまり、熱は、原子・分子の運動に影響を与え、それが温度を上げたり下げたりすることになる。
つまり、熱はエネルギーの一種であるが、温度を上げるために、どの程度のエネルギーが必要かは、物質によって異なる。
物質の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーを考えてみよう。
ある物質の温度を1℃上げるのに必要な熱エネルギーを熱容量という。
ある物体に熱量Qを加えたとき温度がΔT変化したとすると,この物体の熱容量Cは
C=Q/ΔT
で表される。単位はJ/Kである。
熱容量の大きな物質は、温度変化し難く、熱容量の小さい物質は、温度変化し易い。
また、同じ物質ならば、質量が2倍になれば、熱容量も2倍になる。
そこで、単位質量あたりの熱容量を比べて見れば、その物質の熱的な性質を表現できる。
物質1gを1℃変えるのに必要なエネルギーを比熱という。
比熱が大きいほど温度変化しにくい。
言い換えれば、熱容量は、比熱と質量の積ということになる。
Cを熱容量、mを質量、cを比熱とすれば、次の式となる。
C=mc
身近な物質の比熱は表のようである。http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/netsu3.html
物を燃焼させると発熱する。
熱現象は、燃焼との関係で、古代より関心を持たれてきた。
アリストテレス以来、「火」は世界を構成する元素の1つとして考えられてきた。
その後、可融性、揮発性、可燃性という物質の持つ3つの性格に対応した3原質説が考えられた。
それぞれの性質を担う実体が存在すると考えられたのである。
燃焼については、物体から可燃性原質が逃げ出す現象と考えられた。
その延長線上に生まれたのが、フロジストン説である。
フロジストンとは、可燃物に含まれる物質で、これが物体から遊離するのが燃焼であるとされた。
フロジストン説は、燃焼に関係する現象の多くをうまく説明することができ、広く受け入れられるところとなった。
そして、熱は、このフロジストンと関係しているとみなされた。
つまり、熱は一種の物質であると考えられていた。
ラボアジェらによって、1777-8年に、燃焼が急激な酸化であるという今日的な燃焼理論が打ち立てられた。
その後、気体の熱的な性質について検討が深められ、熱がエネルギーであることが理解されるようになった。
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