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2009年8月18日 (火)

ギラン・バレー症候群と砒素中毒の鑑別診断/「同じ」と「違う」(3)

女優の大原麗子さんが亡くなった。
自宅寝室で亡くなっていたのを、6日に、弟の政光さんが警察官とともに発見した。
死因は、解剖の結果、不整脈による内出血と診断された。
晩年はそううつ病やギラン・バレー症候群との闘病生活だったが、復帰を目指し、月1回の通院や、筋トレなどリハビリも行っていたという。

大原さんといえば、サントリーのCMで多くのファンを魅了した。
サントリーによれば、CMは、昭和55(1980)年の「レッド 雷篇」から平成2(1990)年の「オールド ニューヨーク篇」まで、27シリーズ約80作品が放送された。
ほとんどが、市川崑監督が手掛けたものである。

日本酒の愛好家をウイスキーの世界に取り込むため、和の世界でウイスキーをアピールしようということで起用された。
もっとも、当時の大原さんは、和のイメージではなかったらしい。
それが、和服を着て、男の帰宅を待つ女を見事に演じることによって、大原さん自身が「和」を代表するキャラクターになった。

大原さんが亡くなられた報道記事の中で、ギラン・バレー症候群という言葉が使われていた。
以下のような病気である(Wikipedia/09年8月10日最終更新)。

ギラン・バレー症候群( - しょうこうぐん、Guillain-Barré syndrome)とは、急性・多発性の根神経炎の一つで、主に筋肉を動かす運動神経が障害され、四肢に力が入らなくなる病気である。重症の場合、中枢神経障害性の呼吸不全を来し、この場合には一時的に気管切開や人工呼吸器を要するが、予後はそれほど悪くない。日本では特定疾患に認定された指定難病である。

まあ、一般によく知られている病気とは言えないだろう。
しかし、私には、和歌山カレー殺人事件を、当時は珍しかったインターネットを駆使して追求した三好万季『四人はなぜ死んだのか』文春文庫(0106)で言及されていた記憶があった。

三好さんは、前段階に起きている急性砒素中毒事件を、きちんと鑑別診断していれば、和歌山カレー殺人事件は起きなかった可能性がある、と指摘している。
どういうことか?

「毒婦」にしてみれば、致死量におよぶ「重(亜砒酸)」を盛っても、「ギラン・バレー症候群(GBS=多発性根神経症)」などという聞いたこともない病名が付くのだから、腹の中では呵呵大笑していたに違いない。
実はGBSは、少なくとも砒素中毒ではないと鑑別されなければ、付けられない病名なのである。
「重」を盛っても、絶対にばれない!」
経験の積み重ねに裏打ちされ、学習されたこの確信がある限り、これほど快感を伴うスリル満点のゲームがやめられる訳がない。おまけに保険会社が、大型賞金まで付けてくれるのである。

ただし、ギラン・バレー症候群と砒素中毒の鑑別診断については、Amazonの書評で、以下のように批判されていることを付言しておく。

カレー事件以前の砒素中毒で、医師たちがギランバレー症候群と誤診したことも著者は批判しているが、砒素中毒よりもギランバレーの方がずっと確率が高いのだから、症状が部分的に重なっていれば、そう診断されても仕方がない。

私には、ギラン・バレー症候群と砒素中毒の鑑別の困難さは分からない。
しかし、結果的に砒素中毒だった事件を、最初は食中毒と誤診断し、次に青酸中毒と誤診断したことも事実である。
この事件では、遺族らが、初期治療を行った和歌山日赤病院を相手取って、急性砒素中毒の初期治療に不備があった、などとして損害賠償請求を行った。
一審では遺族らの主張が一部認められたが、二審では病院側の勝訴になった。
いずれにしても、症状から原因を判断する上で、何が「同じ」で、何が「違う」か、を判断することが決定的に重要であるといえよう。

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