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2009年8月13日 (木)

2℃の「違い」の影響

異常気象の原因の1つとされるENSOとは、エルニーニョと南方振動の2つの現象(El Nino Southern Oscillation)を総称したものである。
エルニーニョについては、次のように説明されている。
http://kobam.hp.infoseek.co.jp/meteor/enso.html

熱帯太平洋での海面水温をみると、西部では年中29℃を越えるのに対し、東部では深海からの湧昇やフンボルト寒流によって25℃以下になっている。海面水温は、季節変化をしており、7月には南東貿易風の2_2北上によってペルー沖では風が強まり、寒流や湧昇も強まって海面水温は低下し、逆に12月には風、寒流ともに弱まり、北から暖流が流れ込んで海面水温は高くなる。この暖流のことを、地元の漁師がクリスマスにちなんでエルニーニョと呼んだ。
20世紀になって、南アメリカ沿岸近くの海面水温の上昇は、赤道沿いに東太平洋に広く広がっていることがわかった。この季節的な温度上昇は、数年程度の間隔で、平年より2~3℃高くなることがある。図1は1997~1998年の海面水温の平年偏差を示しており、このときは海面水温の上昇が5℃近くになった。図2の実線は赤道東部太平洋での海面水温の偏差の時系列を示しており、海面水温の上昇がいくつかの年に見られる。そして、暖水は長期間(1年程度)維持され、世界的な異常気象をもたらすこともわかってきた。

つまり、平均より2~3℃高い、ということが大きな要因ということである。
2~3℃の差異というのは、大きいような小さいような、という感じではなかろうか?
地球温暖化ということがいわれているが、過去100年間での平均気温の上昇は、0.74℃だといわれる。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、2100年における世界の平均気温は、最悪のシナリオで4℃、最良のシナリオでも1.8℃上昇すると予測している。

佐伯平二/おおの麻里『「2℃の違い」を知る絵本 』青春出版社(0806)という絵本がある。
2℃温度が上昇すると、どんなことが起こるか?
われわれは、氷河が溶けて海面が上昇する……、というようなことを考える。
しかし、それだけではない。
上掲書で解説されている温暖化の影響を眺めてみよう。

1.体温への影響
動物には、周囲の温度の変化に左右されないで一定の体温を維持する恒温動物(哺乳類、鳥類)と、周囲の温度変化の影響を受けて体温が変化する変温動物(爬虫類、両生類、魚類など)がある。
もちろん、人間は恒温動物である。
恒温を維持できるのは、体温が高くなると汗をかいて熱を放出し、低くなると体を震わせて筋肉を動かし、熱をつくる。
体温調節中枢で血液の温度をモニタリングし、人間の場合、おおよそ36.5~37.0℃の範囲で一定に保たれることになる。
もし、大気中の温度(気温)が体温より高くなると、汗をかき、その汗が蒸発するときの気化熱で体温を下げる。
しかし、大気中の水分が多くなり、湿度が75%以上になると、汗が蒸発できなくなって、体内に熱がこもり体温が上昇してしまう。
熱中症と呼ばれるものであり、気温が平均体温より+2℃になると、熱中症のリスクが一気に高まる。

2.水温の影響
風呂の温度が体温より1~2℃低めの34~36℃の場合、熱くも冷たくもなくエネルギー消費が最少となる。
不感温浴という。
体温+2℃くらいまでの37~39℃は微温浴で、副交感神経の働きが高まり、心身ともにリラックスできる。
40~41℃になると、熱めのお湯になる。高温浴である。
恒温動物の人間でさえ、このように敏感に感じるが、多くの魚は、0.05℃程度の微妙な水温の変化を感知できるといわれる。
つまり、魚にとっての1℃は、人間の10℃に相当するということになる。
魚が水温に敏感なのは、水と空気の熱伝導率の違いの影響があるらしい。
空気が0.0241W/m・℃であるのに対し、水は0.561W/m・℃であるため、水は空気より23倍熱が伝わり易いということになる。
温度を1℃上げるために必要な熱量(熱容量)は、水が空気の3500倍である。
つまり、水が熱を吸収し易いということになる

3.紅葉の見ごろへの影響
紅葉の見ごろについては、以下のような式で予測が行われている。

Y=係数①×T-係数②

Yは紅葉の見ごろの予想日で10月1日からの通算日数。Tは9月の平均気温。係数①が4.62、係数②が47.69である。
この式で、9月の平均気温Tが2℃違うと、見ごろの予想日が10日ほどずれることになる。

2℃の違いは、身近なところにも大きな影響を及ぼすということである。
温暖化の傾向については慎重に見極める必要があると思うが、個人的には、やはりLOHASな生活を志向し、省資源・省エネルギーを心がけたいと思う。

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コメント

■7月異常気象 原因はエルニーニョ 気象庁検討会が見解―環境詐欺師見参!!

こんにちは。最近の異常気象酷いですね。最近も被害者が大勢出ました。亡くなった方々のご冥福をお祈りさせていただきます。今回の梅雨が長引くなどの異常気象、やはり、エルニーニョが関係しているようです。これを地球温暖化に結び付けている方もいるようですが、私は、昨年より継続する太陽活動の不活発さによるものだと思います。この太陽活動の不活発さにより、いずれ地球寒冷化に向かうかもしれません。しかし、寒冷化になるといっても、数十年、数百年年かけて徐々になるということで、十分対処できます。温暖化も同じことです。私は、温暖化・寒冷化災厄説を大声で叫ぶ人たちは、「環境詐欺師」でありいわゆる「振り込め詐欺」の連中よりも、たちの悪い連中だと思います。ここに書いていると長くなってしまいます。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年8月14日 (金) 11時38分

yutakarlsonさん、コメント有難うございます。

原因が何か、諸説あるのでしょうが、感覚的には異常気象が多発しているように思いますね。
情報通信の発展によって、異常気象情報、被災情報に接する頻度が増えていることも原因かも知れませんが。
いわゆるエコを声高に主張する人に「いかがわしさ」を感じる部分は確かにあります。

投稿: 管理人 | 2009年8月24日 (月) 11時16分

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