今年の夏は、やはり異常気象か?
今年の夏は、記録的な集中豪雨により大きな被害が発生したり、梅雨明けが異常に遅れたりした。
異常な事態のように感じるが、しかし異常なのは毎年のことのような気もする。
つまり、異常の常態化である。
産経新聞(8月3日)によれば、今年の7月は、全国的な梅雨明けの遅れや九州・山口等でも豪雨があり、北日本では日照不足などもあって、各地で天候不順が相次いだ。
その原因をさぐるため、気象庁は急遽、3日に「異常気象分析検討会」を開催して大規模な大気の流れを解析することを決めた、という。
東海地方だけでなく、九州北部、中国、近畿、北陸、東北の各地方がまだ梅雨明けしていない。
統計が始まった昭和26年以降、近畿で最も梅雨明けが遅かった平成15年の8月1日の記録を更新した。
長引く梅雨は全国で日照時間を短くし、北日本の日本海側では7月の日照時間が平年の54%と、やはり統計を始めた昭和21年以降最短だという。
ところで、このような気象の異変は、異常と呼ぶべきであろうか。
異常気象の定義は、Wikipediaによれば以下の通りである。
気象庁では、「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」を異常気象と定義している。
世界気象機関では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」を異常気象と定義している。
エルニーニョ現象や、これに南方振動を含めたENSO(注:El Nino Southern Oscillation(エルニーニョ・南方振動)の略で、赤道太平洋の現象であるエルニーニョとそれに密接に関係する大気現象である南方振動の2つの現象を総称した呼び名-http://kobam.hp.infoseek.co.jp/meteor/enso.html)は、異常気象の原因となるとされているが、エルニーニョ現象は数年の周期で起こるものであり、「エルニーニョ現象=異常気象」ではない。
また、気象庁の異常気象レポートでは、「過去に経験した現象から大きく外れた現象で、人が一生の間にまれにしか経験しない(過去数十年に1回程度の頻度で発生した)現象」ともしている。
つまり、25~30年に1回程度の頻度でしか起こらない気象を異常気象としているようである。
産経新聞記事では、今年の夏の「異常気象」について、以下のように説明している。
気象庁は、7月は気圧の谷が頻繁に南下し、梅雨前線の北上を阻止した。
また、太平洋高気圧が7月下旬に弱まったことから、梅雨前線を押し上げられなかった上、梅雨前線に向けて南から暖かく湿った空気が大量に流れ込む事態を許した。
このため前線南側で大気が不安定になり、集中豪雨をもたらした。(図は、産経新聞8月3日)
気象庁は「(6月に発生した)エルニーニョが、今回も太平洋高気圧に影響を与えた可能性がある」と推測している。
また、ジェット気流(亜熱帯ジェット)が7月は例年より強かった上、南よりに流れた。度重なる気圧の谷の南下は亜熱帯ジェットが影響したとみられるが、これもエルニーニョとの関連が指摘されている。
ただ、気象庁はエルニーニョが天候不順の主原因とする見方には否定的で、検討会の会長でもある東京大学気候システム研究センターの木本昌秀教授(気象学)も、「程度の差こそあれ、梅雨の末期はしばしば前線が活発化する。異常気象とまではいえないのでは」との見方を示している。
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