大川隆法と田母神俊雄/「同じ」と「違う」(4)
唐突な比較かも知れないが、「幸福の科学」の大川隆法総裁と、元航空幕僚長田母神俊雄氏から受ける印象が、かなり類似しているのではないかと感じた。
田母神俊雄氏の行動と主張に関して、疑義を提出したことがある。
09年1月10日:田母神第29代航空幕僚長とM資金問題
09年1月11日:田母神前幕僚長のアパ懸賞論文への応募
09年1月12日:田母神氏のアパ論文における主張…対華21箇条要求
09年1月13日:田母神氏のアパ論文における主張②…張作霖爆殺事件
幸福実現党(大川隆法総裁)の名前で出されている意見広告がある。
大川隆法総裁の講演から抜粋したものだと説明している。
まず、リード部分で次のようにいう。
いま、総選挙で問われているのは、政権選択ではなく、「国難にどう対処するか」ということだ、とする意見である。
私は、「国難にどう対処するか」に対する判断を投影する政権選択選挙だと考えるが、幸福実現党の意見広告の大見出しを抜き書きしてみよう。
【北朝鮮「拉致問題」】
【「憲法九条」は植民地思想】
【「靖国参拝」について】
【「国益」を論じるのは当然】
【「国防」に言論の自由を】
さて、「これが誇りある日本の教科書だ」という副題のついた田母神俊雄『田母神塾』双葉社(0903)を見てみよう。
田母神氏は、北朝鮮による拉致問題を解決するためには、「日本人拉致=北朝鮮による先制攻撃」と解釈し、北朝鮮に攻撃を仕掛けるべきだ、と説いている(p216)。
これは、自民党小池百合子氏と幸福実現党が共闘を宣言した同党の立候補予定者だった泉としひこ氏の合同街頭演説会で泉氏が演説していた「自衛隊のレンジャー部隊を送り込んで、金正日を生け捕りにする」ということと共通するだろう。
田母神氏は、憲法や教育基本法などを改正した占領期間中の法改正は国際法違反で、大日本帝国憲法時代に戻ることが好ましいとしている(p70)。
これも、「憲法九条の思想は植民地思想」で、九条の存在そのものが国家の主権を放棄する違憲の疑いのあるものである、とする幸福実現党の主張とほとんどオーバーラップしているといってよい。
両者ともに、占領期間は植民地の時代で、その期間に決めたことは無効だという主張である。
靖国神社への首相や大臣の参拝に関しても、両者の主張はほとんど同じとみていいだろう。
幸福実現党の主張は、田母神氏の著書を「教科書」にしているのではないか、と思うくらいである。
それも当然のことと考えるべきであろう。【「国防」に言論の自由を】の項で、次のように言っている。
昨年、新聞に航空幕僚長が更迭された記事が載っていましたが、自衛隊幹部が自由な意見を発表しただけで、すぐに更迭されるようでは、この国の安全が守れるかどうかは怪しいところがあります。
田母神氏が更迭されたのは、自由な意見を発表しただけだからではないだろう。
その意見が、内閣の公式見解と著しく乖離したものだったからである。
私は、田母神氏とほとんどの主張を同じくする幸福実現党は、やはり軍国化路線をめざしていると判断せざるを得ない。
それは自民党の一部のタカ派と共通するものであり、その1人として、小池百合子氏がいる、という構図であろう。
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コメント
幸福実現党の号外チラシは、私も見ました。九条こそ、国際社会において、日本の日本たるオリジナリティーにしていかねばならないと考えているものとしては、幸福実現党が公認されていくことに、危機感を感じています。
私は左でも右でもありませんが、戦争放棄を謳う条文は、世界にただ一つの、日本の個性として、守るべきだと思っています。
(私の彼氏が、選挙ポスターを見て、「(家畜のための)幸福実現党って書き込みたいね」と言っていました。)
私はアメリカ中心のマネー資本主義的価値観が、中央集権的教育とマスコミやネットの発達による情報化によって急速に進行し、グローバルに価値観が画一化され、子供にも画一化された価値観が植え付けられ、地域や国の特色や文化…個性が失われてきたことこそ、地球全土の植民地化だと感じています。
利便性と快楽性…「儲かる・簡単・便利・快適・楽チン」(笑)を追求する価値観は、人間を家畜化するものだと、皆が今ようやく気付き始めた最中で、幸福実現党のKYぶりに呆れています。
投稿: 北畠彩子 | 2009年8月24日 (月) 23時12分
北畠彩子様
コメント有難うございます。
「戦争放棄を謳う条文は、世界にただ一つの、日本の個性として、守るべきだと思っています。」については、まったく同感です。
幸福実現党については、さすがにそれほど支持が広がらないだろうとは思いますが、大川氏の著書が相当部数売れているのも事実でしょうね。
投稿: 管理人 | 2009年9月15日 (火) 15時33分