人口減少社会の現実
現代が文明史的な転換期なのではないだろうか、ということを書いた。
09年5月21日の項:実質GDPの大幅減と文明史の転換
そして、その大きな要因として、わが国が減少人口社会に突入したことを挙げた。
09年1月2日の項:人口減少社会の到来とグローバル市場主義モデルの終焉
衆院選をめぐってさまざまな動きがあるが、小泉政権の「改革なくして成長なし」というスローガンをどう評価するかは、大きな争点と言っていいだろう。
私たちは、果たして成長を目指し続けていいのだろうか?
09年1月3日の項:モデルなき人口減少社会に向かって
今朝の産経新聞に、このことを痛感させられる記事が掲載されていた。
「静かな有事」という連載記事で、見出しは「抜け出せぬ成長期の呪縛」とされている。
「成長期の呪縛」とはどういうことか?
財務省の勉強会で財務官僚が口にした言葉。
「公的支出のあり方は経済成長期のモデルを引きずっている。頭ではなんとなく分かっていても体がついていかない…」
確かに、私たちの生きてきた時代は、人口が増え、経済が成長していくのが常態だった。
道路、港湾、鉄道、ダム、空港などのインフラが次々と整備されてきた。
静岡県でも、6月4日に、富士山静岡空港が開港した。
国内で96番目だという。
静岡県には、東海道新幹線の駅が6つある。
全国最多である。
だから、空港もあってしかるべきか?
私は、むしろ新幹線へのアクセスがいいのだから、空港は無くてもいいのではないか、と思う。
難産の末の開港だったが、黒字化するのは至難のことではないだろうか。
7月5日の知事選に向けて、各陣営が最後の注力をしている。
衆院選の前哨戦的位置づけがされているので、全国的な注目度も高いだろう。
民主党系候補が2人立候補しているが、それでも自民・公明推薦候補は苦戦を余儀なくされているようである。
この知事選自体が、空港開港をめぐって前知事が辞任せざるを得なかった結果だ。
本来的には、新空港開港はめでたいこととして、与党側に有利に働かなければならないところだろうが、そういう雰囲気は余り感じられない。
産経新聞記事には、水道の使用量予測のグラフが載っている。
私がリサーチャーの頃には、水需要をいかに抑制するかが大きな課題だった。
ダム建設が難しくなるにしたがい、ダムによって生み出される水のコスト(原水単価)の高騰が避けられず、水の供給能力が、成長の足かせになるとされていた時代である。
そのため、水需要を抑制するような水道料金(例えば逓増型料金体系)を提言したこともある。
しかし、今や需要が減ってきているために、水道料金を上げざるを得ない自治体が増えている。2040年度の水道料金は、2004年度の平均2.7倍になるという試算もあるという。
水道施設の耐用年数は約40年であるが、40年前の需要推計をもとに敷設された水道を、そのままの規模で更新しようとしている。
もちろん、上水道は最も基本的な生活必需財であり、その安定的な供給は、シビルミニマムと言えよう。
しかし、そのレベルを維持しようとしたら、大幅な料金値上げが不可避だということである。
もちろん、水道だけの問題ではない。
公的年金の制度設計の根本に、将来人口とその年齢構成がある。
それは、出生率の予測をどう考えるかという問題であるが、2025年の出生率を、1985年の時点では2.09と想定していた。
その後、出生率予測は下方修正されてきたが、それでも1.61程度である。
しかし、実際の出生率は減少を続け、2008年の出生率は、1.37だった。
経済全体への影響もあるが、年金制度の基礎が、いかに非現実的な予測に基づいているか、ということである。
人口減少社会の現実を見据えた制度設計が必須であり、衆院選のマニフェストの注目ポイントの1つとしていいだろう。
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