富士山湧水の水文学
「水文学」という研究分野がある。ミズブンガクではなく、スイモンガク。
Wikipediaでは、次のように説明されている。
水文学(すいもんがく、英: hydrology)とは、地球上の水循環を対象とする地球科学の一分野であり、主として、陸地における水をその循環過程より、地域的な水のあり方・分布・移動・水収支等に主眼をおいて研究する科学である。
研究対象は、水の供給源としての降水の地域的・時間的分布特性、蒸発、浸透、陸水や地下水の移動等が中心となる。
富士山への降水のかなりの部分が伏流水となって、山麓の三島市などで湧出する。
その湧出量が、工場立地に伴い減少してしまった。富士山は、飛行機などから眺めると、独立峰であることがよくわかる。
私も大分前のことであるが、冬のよく晴れた日に、富士山を飛行機から見る機会に恵まれ、地上から眺めるのとはまた異なった姿に感動したことがある。
インターネット上にも、富士山の写真は多数ある。
中には、飛行機から撮影したものもあるが、私がみたときに比較的近い写真が掲載されているブログがあった。BoAブログから借用する。
ブラウジングしていたら、土隆一『富士山の地下水・湧水』という論文がヒットした。
著者は、静岡大学名誉教授の地球科学者である。
現時点での富士山湧水の水文学の概説だと思われる。以下、概要を見てみよう。
富士山(3776m)は、およそ10万年前に、駿河湾北部の愛鷹山の北西側、小御岳火山の裾野に誕生した。玄武岩質溶岩と火山灰などの火山砕屑物を繰り返し噴出し、それらが成層して、円錐型となった。
表面の傾斜は、山頂では30°近くに達するが中腹以下では5°前後の緩やかな傾斜で、広い裾野が広がる。
底面の直径はおよそ30~40kmで、体積はおよそ1200~1400km3に達する。
日本の火山の体積の平均は40km3ということだから、富士山は群を抜いて大きい。
山麓一帯には、御殿場周辺の湧水群、三島湧水群、柿田川、吉原湧水群、富士宮湧水群、忍野八海など、数多くの湧水が知られ、富士山の多量の雨や雪が降り、それらが地下にしみ込んで地下水を涵養し、やがて湧水として湧き出していると考えられる。
富士山への降水量は、年間で約22億m3と推定されている。
この富士山への降水に由来すると考えられる湧水は100以上あるとされる。
これらの湧水の中で規模の大きなものは、いずれも新富士旧期溶岩流の末端にある。
新富士旧期溶岩流は、11,000~8,000年前の富士山の大規模噴火によって、山頂付近の火口から御殿場付近を除く山麓一帯に硫化した大量の玄武岩溶岩流で、中期・新期溶岩流に比較して、厚く、広域的に分布している。
ほぼ現在の富士山の輪郭が形成されたと考えられる。
この三島溶岩流の末端に、楽寿園小浜池や柿田川が位置している。
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