静岡県知事選挙の結果と自民党の迷走
「想定の範囲内」と言うべきだろうか?
7月5日投・開票の静岡県知事選挙で、川勝平太氏が接戦を制した。
川勝氏は、『文明の海洋史観』中央公論社(9711)などの著作で知られる経済史学者であるが、2007年より、浜松市の静岡文化芸術大学の学長に就任した。
静岡県の総合計画に織り込まれている「富国有徳」の言葉などに影響力を持ったと推測されるが、静岡県の特に東部地域では知名度は余り高くなかったといっていいだろう。
自民・公明が推薦した坂本由紀子氏は、沼津東高から東大法学部を経て労働省(現厚生労働省)のキャリア官僚の道を歩み、1996年には、石川前知事の下で副知事に就任。
厚生労働省に局長として戻り、2004年の参院選挙で静岡選挙区から立候補して当選した。
現在はその任期の途中ということになる。
人脈や地盤という点からすれば、坂本氏が有利であったことは疑いえない。
そして、従来、静岡県は「保守王国」とも言われていたように、伝統的に保守勢力の強い風土だった。
しかも、今回の選挙に関していえば、もう1人の候補者の海野徹氏は、元民主党所属の参議院議員であり、選挙を担当する小沢民主党副代表が、川勝氏と海野氏の一本化を図ったものの、調整に失敗して両者が立候補するという状況だった。
今までの静岡県における選挙の常識からすれば、坂本氏の楽勝のパターンだったはずである。
海野氏が早くから立候補を表明していたのに対し、川勝氏も坂本氏も、諸般の事情で立候補の意思表示が直近になった。
共に短期決戦を余儀なくされたわけである。
そのことが、いわゆる「風」の影響を受けたことになるのだろうか?
結果は、以下の通りである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009070602000120.html
当 728,706 川勝平太 無新 =民社国
713,654 坂本由紀子 無新 =自公
332,952 海野徹 無新
65,669 平野定義 共新
川勝氏と坂本氏の票差は、15052票。
得票率の差は、0.8ポイントだから、接戦と言っていいだろう。
川勝氏が勝利したことによって、政局はどう動くか?
与党側は、国政選挙と地方選挙は別と強調しているが、静岡知事選が、総選挙の前哨戦的位置づけで戦われたことは間違いない。
次は都議選であるが、民主党が第一党にでもなれば(その可能性は高いと思われる)、影響は大きいだろう。
自民党は既に末期的な迷走ぶりを示している。
古賀選対委員長が、東国原宮崎県知事に自民党からの出馬を要請したという。
それに対して、東国原氏がつけたとされる注文がマスコミを賑わしているが、もはや茶番というべきだろう。
確かに宮崎県知事として、宮崎県のPRに大きな貢献をしたことは認めるべきだろう。
しかし、その実績が、国会議員に求められる資質や能力なのか?
私は、東国原氏の知事活動は、タレント稼業すなわち、そのまんま東の延長線上のものに過ぎなかったと考える。
つまり、自民党は、風の影響を受けて、行方定めず迷走しているように見える。
自民党の中では、本気で「麻生降ろし」を主張する向きもあるようだが、それでは次期総裁候補に誰を担ごうというのだろうか。
順当に考えれば、麻生首相と総裁の座を争ったメンバーが有力候補ということになるだろう。結果は、表(Wikipedia09年7月1日最終更新)のようだった。
議員票は、総裁選で注目度を集めようとするイベント効果を狙ったものだろうから、自民党という組織のホンネは、地方票により明確に現れていると考えていいだろう。
麻生氏の圧勝というのが、当時の自民党という組織の意思だった。
選挙日は08年9月22日だったから、まだ1年も経過していない。
郵政民営化総選挙と比べれば、only yesterdayである。
この経過時間からして、他の候補者が、麻生氏を抜き去る力量を備えたというのはいささか難しいだろう。
とすれば、この中から総裁を選ぶとすると、前回総裁選の有権者は、総裁候補を評価し損なったということになる。
これら以外に有力候補者はいるのか?
総裁選には、山本一太氏と棚橋泰文氏が出馬意向を示していたが、推薦人が集まらなく断念している。
この2人とても、推薦人すら集まらない状況から、一挙に総裁へ、というのは難しいだろう。
中川昭一氏は、酩酊会見の記憶も鮮明だから、担ぐ人もいないだろう。
郵政問題で知名度を上げた鳩山邦夫氏も、党内には反発者も多そうである。
党内事情もさることながら、兄由紀夫氏が民主党代表で、兄弟で首相の座を争うという事態では、日本という国の器の大きさが問われかねない。
舛添厚生労働大臣?
せっかく担当しているのだから、先ずは年金問題等に注力するのが優先課題というものだろう。
と考えてくると、自民党の総裁候補者は払底しているというべきではないだろうか。
もっとも、私は、森喜朗氏の後、自民党は下野すべきだったのであり、政権交代が遅すぎたと考えるものであるが。
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コメント
■ニコニコ動画世論調査、都議選「投票に行く」66%、自民支持がトップ―マスメディアとネットメディアの乖離現象?
こんにちは。静岡知事選に関しては、私自身分析してみましたが、あながち自民党の大敗と決め付けられない部分があると思います。都議選に関しては、マスコミでは民主党が大躍進いうような報道の仕方ですが、ネットなどのアンケートをみているとそうでもありません。何か最近、マスコミとネットでの報道に乖離が多く見られるようになってきたと思います。このままでは、新聞の購読者や、視聴者も離れていくのではないかと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
投稿: yutakarlson | 2009年7月 7日 (火) 14時57分
yutakarlson様
コメント有り難うございます。
「あながち自民党の大敗と決め付けられない部分」とは?
自公VS非自公で分けると、713,654:1,127,327≒1:1.6
自と公の割合は不明ですが、少なくとも「自」の大敗であったことは、今までの県知事選との対比でも間違いないように思いますが。
さて、都議会選の結果ももうすぐ判明しそうです。
投稿: 管理人 | 2009年7月12日 (日) 19時47分
「国民は程度の低いバカだ」とあざ笑う自民党は、まんまと国民をだましおおせて郵政私物化をやった。国民の幸福を奪い取って、実際に幸せになったのは郵政財産をクイモノにしたヤクザだったのだ。こっそりと国民の財産をタダ同然で、小泉竹中西川宮内らのヤクザ仲間が山分けしたのだ。一夜にしてホテル王になったり莫大な利益を手にした小泉ヤクザ同盟の凶悪犯は笑いが止まらない。今度は外国のハゲタカと共謀して、おやじの推薦状一枚でアメリカの大学へタダ留学させた落第息子に地盤カンバンかばんを譲ろうとしている。代々のヤクザが首相になったのをいいことに横須賀ではヤクザが選挙を取り仕切って四代目組長を代議士にするつもりである。国民を強制的に虐待しておきながら、暴力団の跡継ぎだけが優雅に暮らしている自民党を退治しましょう!
投稿: あかね | 2009年8月23日 (日) 06時17分
あかねさん、コメント有難うございます。
郵政民営化の実体を厳しく見るべきだと思います。
なかなか、こういう風な過激な発言できませんが。
「地盤カンバンかばん」を譲り受けただけの世襲議員は、いずれ淘汰されることになるでしょう。
そうでなければ、この国に希望が持てません。
投稿: 管理人 | 2009年8月24日 (月) 11時21分