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2009年7月 4日 (土)

天皇の金塊(7)…ロッキード事件とゴールド・カルテル

田中角栄元首相を排除に導いた「ロッキード事件」には、未だ明るみに出ていない謎が残されている。
09年3月1日の項:ロッキード事件④…背後にある闇
09年3月14日の項:ロッキード事件⑨…日米司法取決と証拠の偽造
09年3月29日の項:ロッキード事件⑱…残されている謎 他

その謎のある部分が、高橋五郎『天皇の金塊』学習研究社(0805)に記されている。
日本のマスコミの報じた「ロッキード事件」の構図は、首相および政府高官の絡んだ贈収賄事件というものだった。
上掲書によれば、「ロッキード事件」に登場する児玉誉士夫、シグ片山らは、CIAに連なる秘密ビジネスファミリー「ザ・カンパニー」の仲間である。
児玉誉士夫は、「金の百合」を強奪した張本人の1人であるが、終戦を境にCIAの職員に転進した秘密諜報員だった。
児玉は、CIAの給与台帳に登録され、ロッキード社の秘密代理人も兼ねていた。
シグ片山は、CIAが秘密金融作戦に活用するオフショア銀行の資本を握る偽装会社の代表者だった。

上掲書によれば、田中角栄元首相は、フィリピンのマルコス元大統領と同じように、「金の百合」に過剰に介入しようとして破滅させられた、ということになる。
ワシントン政府は、「ロッキード事件」によって、田中角栄を追い落とし、同時に、「金の百合」の秘密を知りすぎたメンバーを排除した。
サンティやシグ片山は、航空機の不正取引とは無縁だったが、田中追い落としに連動して葬られた。

「金の百合」の収益金は、第二次世界大戦終結の前年に創設された黒鷲信託基金(ブラック・イーグル・トラスト)に追加プールされた。
この基金は、反共産主義体制の確立とアメリカ式民主主義の導入を求めたイタリア、ギリシア、ドイツ、韓国、日本などの諸国に拠出された。
たとえば、日本の自由民主党は、岸信介が首相在任中の1957年から60年までに、年間1000万米ドル(当時の為替レートで36億円)を受け取った。
上記以外にも、ベトナム、インドネシア、イラン、アフリカ、南米チリなどの国々が、この基金から共産主義対策費用を受け取った。

この信託基金は、第二次世界大戦の終結する1年前、ブレトンウッズ条約会議の別室で、連合軍が押収したヒトラー財宝の扱いを研究してきたスチムソン長官らによって創設された。
ブラック・イーグルのイーグルはナチスのシンボルである。
この資金は、内戦時の中国毛沢東共産党と蒋介石国民党の双方に投じられた。
言い換えれば、中共軍も国民党軍も、ブラック・イーグルの資金で対日戦費を賄ったということになる。

日本が敗戦を迎えた1945年秋に、スチムソンらは、マッカーサーの日本占領軍が接収した金塊財宝の一部と、フィリピン山中の「金の百合」を、ブラック・イーグルに合体させた。
1970年代に中国を訪問したニクソン大統領とキッシンジャー補佐官は、680億米ドル相当の純金のインゴットを中国にプレゼントした。
ニクソンらの狙いは、台湾への核攻撃を断念させることにあった。

マルコス元大統領は、サンティを、戒厳令法違反の容疑で逮捕し、サンティの資産を合法的に強奪した。
マルコスは、サンティに、その遺産を遅滞なく引き出せるように遺書を書かせた。
一方で、サンティは、1972年に戒厳令が布告された時点で、自分の資産を隠し始めていた。
その一部は、のちに三和銀行に買収された香港の小銀行に預けられたという。

マルコス元大統領は、「金の百合」を巡る金銭訴訟問題によって、ゴールド・カルテルの取引実態が炙り出されそうになることによって、末路を迎えることになった。
CIA長官らは、フィリピンで反マルコス・クーデターを仕掛けた。
1989年、マラカニアン宮殿から米軍のヘリコプターで脱出したマルコス夫妻は、実際はワシントン政府によって身柄を拘束されたのだった。

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