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2009年7月22日 (水)

海の日と『文明の海洋史観』

私たちの世代には、「海の日」というのは余り馴染みがない。
先日も、同級生のグループで話をしていて、「今度の3連休は・・・」という話題になったとき、既にリタイヤしている友人が、「3連休って?」と言った。
「そうだね、毎日が休日だもんね・・・」ということになったのだが、国民の祝日となったのは1996(平成8)年からである。
趣旨については、国民の祝日の関する法律(祝日法)では、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国家日本の繁栄を願う」とされている。
「海の日」を国民の祝日としているのは、日本だけだという。

確かに、日本は島国で四周を海に囲まれているから、「海洋国家日本」という規定はその通りだろう。
陸地面積では、世界で第60位であるが、排他的経済水域を含めれば、世界で第6位の面積になるという。
しかし、通常、あまり「海洋国家日本」という意識を持たない人が多いのではないだろうか。
その意味で、「海の日」はもっとPRされるべきではないかと思う。

いよいよ国民に政権選択を迫る総選挙の選挙戦に入った。
政権選択とは、国家像を競う選挙ということでもある。
戦後レジームの中で、海洋国家として、どういう戦略を構想すべきかを説いたのが、高坂正尭『海洋国家日本の構想 (中公クラシックス) 』中央公論新社(0801)である。

高坂氏は、「近代の超克」で有名な高坂正顕の次男で、京都大学で猪木正道に師事した国際政治学者だった。
「中央公論」の名編集長といわれる粕谷一希氏によって論壇に送り出され、現実主義の立場から数多くの発言をした。
氏がデビューしたのは60年代の前半で、まだ20代だったが、その当時は、論壇の中心には、いわゆる進歩的文化人が位置していて、高坂氏はやや異端の論客であった。
持前の頭の回転の速さから、TV等でも活躍したが、1996年に62歳の若さで亡くなられた。
民主党の副代表の前原誠司氏は、高坂氏のゼミの出身であり、師を深く尊敬していることで知られる。

京大には、湯川秀樹・貝塚茂樹兄弟、朝永振一郎、桑原武夫など、父が京大教授という知的名門とでもいうべきグループがある。
高坂正尭もその1人に数えられるだろう。
猪木氏の教え子の中でも抜群に優秀だったという。
彼らのほとんどが、洛北高校、旧制でいえば京都一中の出身である。
私の知人にも、父親が京大教授という人がいる。
DNAはまあ仕方がないにしても、育った環境の知的雰囲気というものが、われわれとはまるで違うよなあ、と感じさせられる。

先の静岡県知事選で、自公の推薦する坂本由紀子前参議院議員を破って当選した川勝平太氏も京都生まれである。
渡来人の秦氏の流れを汲むというが、京都の新しい名門校である洛星高校の卒業で、早稲田大学に進んだ。
大都市圏では、高校の偏差値などにおいて、公低私高が著しいらしいが、幸いにして(?)、地方都市では依然として、公立高校が名門とされている例が多い。
それはともかくとして、川勝氏の代表作といえば、『文明の海洋史観 (中公叢書)』中央公論新社(9711)ということになるだろう。
静岡県内では、この書をはじめ、川勝氏の著作の売れ行きが伸びているそうだ。

川勝氏は、従来の文明史観が陸地を中心としたものの見方・考え方に偏っていたことに対し、海からの視点の重要性を提起した。
川勝氏は、次のように言う。

日本は島国であるから、日本列島における歴史は、海をわたってくる文明に洗われながら、島として自立の過程を歩んできた。西洋、東洋、日本の歴史は言うまでもなく、相互に連関なく発達してきたのではない。むしろ連関を深めつつ発達してきた。
……
ところが、歴史研究の基礎ともいうべき歴史観において、交流をつなぐ海は本質ではなかった。唯物史観にせよ、生態史観にせよ、内陸の歴史事象が念頭におかれている。それは従来の縦割りないしタコ壺的な歴史学のあり方と無縁ではないだろう。
……
こうして、戦後の日本人は海をとりこんだ歴史観をもってこなかった。海洋をとりこんだ歴史観をここでは陸地史観との対比において海洋史観と呼ぶことにしよう。

川勝氏は、海洋史観をベースに、日本の国土の将来像として、「ガーデン・アイランズ」を提唱した。
ガーデン・アイランズとは、美しい庭園の島である。
そして、家と庭が一体となった「家庭」を再建しよう、という。
そのために、軽井沢に土地を求めた。別荘としてではなく、永住の地として、である。
静岡県知事選の際の住所も軽井沢であった。
先ずは日本の縮図ともいうべき静岡県を、美しいガーデンの方向に変えていくことが、知事としの責務であろうか。

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