富士山湧水の由来
三島市内を流れる川の水量が、かつては今からは想像できないほど豊かなものであったことは、太宰治の『アルト(老)ハイデルベルヒ』の一節からも窺い知ることができる。
09年6月18日:太宰治と三島・沼津
そして、水量が減ったとはいえ、依然として「水の都」たらんとして、さまざまな努力が続けられている。
09年4月24日:水の都・三島と地球環境大賞
この三島市内を流れる水は、富士山や箱根連山に降った雨が流出したり、地下を通って湧き出したりしたものである。
静岡県の環境衛生化学研究所環境科学部と静岡県水利用室は、県内の富士山周辺に広がる湧水について、地理情報システム(GIS)を利用した電子マップを作成した、と静岡新聞(7月27)日で報じられている。
三島市と沼津市の間に位置する清水町の柿田川湧水も、昔に比べると湧出量が少なくなったとはいえ、豊富な清水を絶えず湧出している姿は訪れる人を感動させる。
富士山に降った雨が、柿田川や三島市内の川に、どれくらいの時間をかけて、どういう経路で湧・流出しているかについては、諸説があった。
今回の調査では、335カ所について現地調査し、271カ所で湧水が確認された。
湧水に含まれる酸素・水素の同位体比を測定し、それぞれの場所の湧水や地下水が、どの地域の降水に由来するかを推定した。
同位体比は、降水の標高によって異なるとされている。
例えば、富士山西麓では白糸の滝に、東麓では棚頭(小山町)に湧き出す水は、標高1700m付近に降った雨水に由来するという。
また、富士山系の水は硫酸イオン濃度が、愛鷹・箱根山系は塩素イオン濃度が比較的高い傾向がある。
この同位体測定データなどをもとに、地下水の流れを3次元モデル化したところ、富士山への降水が白糸の滝などで湧出するまでに、約20年前後かかると推定されるという。
また、柿田川湧水には、富士山系地下水のほか、愛鷹・箱根山系の水も3~5割混ざっているなども分かった。
富士宮市・芝川町(来年3月に富士宮市と合併予定)を流れる芝川に、「芝川のり」という淡水産の緑藻(カワノリ)が自生する。室町時代や江戸時代には、幕府や朝廷に献上されたというが、近年は収穫量が激減し、「幻のカワノリ」と言われるほどの貴重品になってしまった。
写真は、http://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/jimusyo/fujiazami/fujiazami_56/56-3.html
「カワノリ」は、栃木県から九州までの太平洋に流れる河川上流部の特定の箇所だけに生えるという特異性があり、育成条件としては、以下があげられる。
1.水温が通年8~15℃と低いこと
2.流速が秒速0.5m以上であり、特に秒速 1~1.5mでよく成長すること
3.日当りのよいこと
4.水深30cm以下であること
http://www.city.fujinomiya.shizuoka.jp/food/shibakawanori.htm
幻の芝川ノリを特産品として復活させるプロジェクト(日本大学芝川のり研究会(代表:石川元康助教授))が進行中だという。
芝川ノリは、1本隣の水系には自生しないという。
富士山の恵みには計り知れないものがあるようだ。
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