GMの破綻と「盛者必衰の理」
GMが、アメリカの連邦破産法の申請を終えた。
これからは、政府主導で再建計画が実施に移されていく。
21世紀に入ったばかりの2001年、「9・11」同時多発テロの衝撃も覚めやらぬ頃、エンロンやワールドコムなどが破綻し、いかにも1つの時代が終わって、新しい時代が始まったことを印象づけられた。
しかし、その時点でも、少なくとも私は、GMが破綻する時期がこんなに早く到来するとは考えていなかった。
もちろん、「アメリカの時代」が終焉するときが来るであろうことは、かなり前から予感されていたことであった。
1985年に行われた「つくば科学博覧会」のあるパビリオンの展示のコンセプトを考えるため、1982年頃だったと記憶しているが、アメリカ各地の科学博物館・自然史博物館などを、約1ヶ月間にわたってリサーチしたことがある。
その折だったと思う。
馬野周二さんという人の『アメリカ没落の論理』ダイヤモンド社(8112)という著書を旅行カバンの中に入れておいた。
アメリカ滞在中に、じっくりとこの国の来し方行く末を考えてみようと思ったのである。
馬野氏の議論に100%同意したということではないが、その時点で、「アメリカの没落」はほぼ必然のように思われた。
その当時はパソコンもなく、出張報告書も手書きの時代だったから、残念ながら記録は散逸してしまっている。
しかし、旅行中のメモとして、上掲書の書評を書いていた覚えがある。
エンロンやワールドコムが破綻したとき、それは「ビジネスモデル」をどう考えるかという問題とセットだったと思う。
エネルギー産業であったはずのエンロンが、斬新なビジネスモデルで、短期間に成長していくさまは、ある種の憧憬の念を抱かせるものであった。
言ってみれば、営利企業もしくは株式会社はかくあるべし、ということである。
それが突然に破綻し、その裏側には、監査法人やビジネスコンサルタントの、社会正義にもとるような行為が横行していたのだった。
それを知って、会社のあり方について、いささか考えることになった。
もちろん、平家物語の昔から、「盛者必衰の理」ということが言われていた。
「企業の寿命は30年」というのも、人口に膾炙したテーゼである。
しかし、エンロンやワールドコムの破綻は、いわば虚業部分の破綻ではないのか?
実業や「ものづくり」のジャンルは、もっと堅固な基盤の上で活動していたはずである。
そういう意味で、GMの破綻は、もっと大きな時代の転換を感じさせるものがある。
もちろん、GMも、「ものづくり」企業というよりも、自動車ローンなど「金融機関」としての性格を強めていたことが破綻の根本要因ではあるだろう。
仮にGMが自動車という「ものづくり」という基軸から離れない経営スタンスをとっていたとしたらどうか?
私は、それにしても、早晩GMの命運が尽きる時代がやってきたことは避けられなかったように感じる。
そもそも、「ものづくり」の限界が見えてきたから、「金融」等に転じたのではないか?
金融というのはあくまで手段であって、目的にはなりえないように思う。
言い換えれば、手段が目的を凌駕してきているといことだろう。
しかし、手段は目的のためにあるのではないか?
私たちは、何を目的としているのか?
ブータンの国王だったか、GDPよりもGDH(国内総幸福)が大事だと言ったという。
しかし、それを何を尺度として計測するのか?
GMの国有化が事実上決定すると、ガイトナー財務長官は、胡錦濤国家主席に、米国債購入の継続を頼んだという。
金融危機対策の原資として、アメリカは多額の国債の発行を迫られているのである。
米国債の需給はどう推移していくのか?
米国債が暴落すると、マネーはどこに向かうのか?
昨年の原油価格の高騰が示唆するように、原油などの商品市場に向かうと考えられる。
原油が高くなれば、自動車産業にとって、アゲインストの風が強まることになる。
やはり、「石油と自動車」のアメリカの時代は、既に過去のものになりつつあるのではなかろうか?
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