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2009年6月 7日 (日)

冤罪を局限するために

足利事件は、改めて冤罪に陥ることの恐ろしさを示してみせた。
私たちの誰もが、濡れ衣を被せられる可能性がある。
特に、痴漢行為などのように、当事者のみの主張が衝突し、第三者の証言が得られにくい事件が増えていることを考えれば、いつ痴漢だと訴えられないとも限らない。
女性が、「この人、痴漢です!」と叫べば、ほとんどの人が、そうかと思うだろう。
また、裁判員制度が始まったことにより、誰もが他人を冤罪に陥れる可能性もある、と言っていいだろう。

冤罪の可能性があるからと言って、当然のことながら、罰すべきものは罰しないと、善良な社会秩序が保てないだろう。
そういう意味で、既に起きてしまった冤罪事件は、不幸なことではあるが、そのプロセスを検証して、今後の糧として生かすことを考えるべきだろう。
足利事件の関連年表を抜粋してみよう。

1990年
5月
12日 栃木県足利市のパチンコ店から、女児が行方不明
13日 渡良瀬川河川敷で女児の遺体発見
1991年
8月 科警研にDNA鑑定依頼
11月 DNA鑑定、一致との結果報告
12月
1日 早朝、菅谷さん足利警察署へ連行、取調べ。夜半自白
2日 菅谷さん逮捕
1992年
2月 宇都宮地裁で初公判。菅谷さん起訴状の内容を認める
12月 第6回公判で否認に転じる
1993年
1月 第7回公判で再び犯行を認める
7月 第11回公判で、無期懲役の判決
1996年
5月 二審判決(控訴棄却)
1997年
10月 弁護団がDNA再鑑定請求(上告趣意書の「補充書1」)
2000年
7月
7日 弁護団「補充書6」を提出し、DNA鑑定の問題点等を指摘
18日 最高裁、上告棄却
2002年
12月 菅谷さん、宇都宮地裁に再審請求
2008年
2月 宇都宮地裁再審請求を棄却、弁護側東京高裁に即時抗告
12月 高裁がDNA鑑定の再実施を決定
2009年
1月 再鑑定始まる
5月 再鑑定結果
6月 菅谷さんの釈放を決定

第三者的にみれば、2000年7月の弁護団の上告趣意書の「補充書6」の時点で、裁判所は、DNA鑑定に関して、
もう一度検証してみる態度が必要だったのではなかろうか。
それを、10日ばかり後に、最高裁として上告棄却の決定を下している。
この10日間で、何を判断したのだろうか?

それに留まらず、宇都宮地裁に提起された再審請求は、かなりの頻度で協議が行われたうえ、ほぼ5年後に棄却されている。
宇都宮地裁は、DNA鑑定の再実施は必要なしという判断を下したわけである。

高裁の判断でDNA鑑定の再実施が行われ、その後は、それまでの経緯が何だったのかと思わせるスピード解決である。
要は、DNA鑑定の再実施を行う判断をするか否かにあった、ということになる。

鑑定技術の進歩という背景要因を考慮すれば、私などは、速やかに再鑑定を実施すれば良かったのに、と思わざるを得ない。
測定に誤差はつき物である。
何回測定するかは、測定のための費用と、それによって得られる効果との対比で決められるべきだろう。
今回の事件では、DNA鑑定が決定的に重要な判断要素だったのだから、最高裁や再審における宇都宮地裁の判断は、理解に苦しむと言わざるを得ないだろう。

足利事件については、捜査ミスという報道がなされているように思う。
しかし、ミスは必ず発生するものであり、絶対に防ぐということは不可能である。
捜査にミスがあったとしても、裁判でそれを容認しない工夫が求められているわけで、裁判員もその辺りを認識して臨むべきだと思う。

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受信: 2009年6月 8日 (月) 02時54分

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