天皇の金塊(2)ゴールデン・リリーと霞ヶ関埋蔵金
高橋五郎氏は、『天皇の金塊』学習研究社(0805)の中で、フィリピンと日本の金塊の関係を題材にした2冊の著書を紹介している。
『失われた金塊の略奪者たち』(“Marcos Legacy Revisited:Raiders of the Lost Gold”)と『黄金侍たち』(“GOLD WARRIORS”)である。
前者は、死亡直前のマルコス大統領とイメルダ夫人をハワイで直撃取材したもので、著者は、エリック・サン・ファンというフィリピンの若手ジャーナリストである。
後者は、「天皇の金塊」が「ゴールデン・リリー(金の百合)と名付けられていたことや、昭和天皇の従兄弟たちが強奪金塊の回収管理に従事した事実の一部を明かしている、と紹介されている。著者はシーグレーブというアメリカ人である。
これらの著書が邦訳されていないのは、日本の出版界が天皇タブーに遠慮しているからだろう、と高橋氏は言う。
高橋氏は、自民党の元幹事長・中川秀直氏が、「予算が足りなければ“霞ヶ関埋蔵金”を使えばいいじゃないか」と発言したことに触れている。
特別会計と霞ヶ関埋蔵金については既に触れたことがある(09年2月8日の項)。
しかし、高橋氏は、新聞や政府実力者たちすら本当のことをまったく知っていなかったようだ、と書いている。
本当のこととはどういうことか?
高橋氏は、この資金こそ、「天皇の金塊」を砕いた一部分から生まれた果実、つまり利息のことだ、と説明している。
中川発言に対して、与謝野馨氏が、「どこの特別会計を調べても、そんなお金は眠っていない」と批判した。
高橋氏は、それこそが、自民党が財政赤字を何で穴埋めしてかを隠そうとする余り、本音を語ったものとしている。
つまり、与謝野発言は、「そんなお金は実在する」という意味だというのである。
日本は、敗戦を認める2カ月前に、アジア12カ国から奪った巨万の富を、フィリピン各地の175カ所のトンネル地下サイトに隠し終えた。
1945年6月1日深夜、日本陸軍がフィリピン全域に設けた175カ所の地下貯蔵サイトの1つである「8号サイト」と呼ばれる地下倉庫の出入口が爆破され、崩壊した。
その中には175名の将官が別れの宴を催していたが、全員が生き埋めにさをれて死んだ。
彼らは、175ヵ所の地下サイトの責任者で、自分の持ち場を爆破処理して、8号サイトに集結していたのだが、騙まし討ちにあったのだ。
爆発直前に地下倉庫からエレベーターで地上に戻り、地鳴りを感じながら足早に立ち去る3人の男がいた。
その中の1人が、ベン・バルモス・ハーミンというフィリピン人で、深夜の現場で目撃したことを、アメリカの報道作家シーグレーブ夫妻に語り、夫妻がそれを上掲の『黄金侍たち』という著書にして公開した。
副題は、「山下財宝のアメリカ秘密回収」(“AMEICA'S SECRET RECOVERY OF YAMASHITA'S GOLD”)となっている。
ベンの証言によれば、ベンと連れ立って8号サイトから立ち去った2人の軍人の1人は、陸軍中佐・竹田宮恒徳(昭和天皇の従兄弟)で、もう1人は、フィリピン防衛を指揮した陸軍大将山下奉文だった。
8号サイトを爆破した日からおよそ3カ月後、山下陸軍大将は米軍に投降し、竹田宮は6月に潜水艦で帰国した。
竹田宮は、戦後臣籍降下して、竹田恒徳となった。
竹田宮を、ベンはキムス・ムラクシと呼んでいた。
ベンは、シーグレーブ夫妻が持参した皇室アルバム写真を見て、直ぐにキムスを識別した。
さらに、秩父宮雍人陸軍少将、三笠宮崇仁陸軍参謀、朝香宮鳩彦陸軍中佐などの顔について、見覚えがあることをシーグレーブ夫妻に告げた。
これらの皇族たちは、1943年にマニラで開かれた会議の参加者だった。
会議の内容は、天皇の名のもとに、陸軍と組織化された日本のヤクザ集団たちが、中国の地下組織と組んで、アジア12カ国の政府の金庫などから略奪した「金の百合」をフィリピン全域の地下施設に隠す手順と進捗状況を確認するためのものだった。
チャコと呼ばれていた秩父宮は、アジアでの金塊と財宝の秘匿作戦の総司令官であり、マニラ郊外の地下サイトの監督責任者だった。
キムスこと竹田宮は、秩父宮を補佐する立場だった。
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