詐欺のケース・スタディ(2)-未公開株取引とマルチ商法
マルチ商法という仕組みがある。
もっとも、公式の法律用語ではない。
一般に、マルチレベル・マーケティングとかネットワーク・マーケティングなどと呼ばれる「連鎖販売取引」のことをマルチ商法と呼んでいる。
連鎖販売取引とは、具体的には以下のような取引である。
「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」とか「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」などと言って勧誘し(このような利益を「特定利益」と言います。)、取引を行うための条件として1円以上の負担をさせる(この負担を「特定負担」と言います。)場合であればこれに該当します。
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/tokushoho/gaiyou/rensa.htm
この商法自体が法律で禁止されているというわけではない。
「特定商取引に関する法律」の枠内であれば、別に問題はない。
私の知り合いにも、マルチとしか考えられない組織に参加している人がいる。
そして、善意で、健康にいい飲み物や、環境にやさしい洗剤などを勧めてくれる。
マルチ商法の問題点は、そこにある。
いいことだから、他人にもお勧めしよう、と本気で考えているのである。
静岡新聞(6月17日)に、「マルチ商法まがい」の手口で出資者を増やしていた投資事業会社の事件が掲載されていた。投資事業会社の名前は「JAM」という。
ネットで調べてみると、JAMは、ジャパン・アセット・マネージメントの略で、本社は千葉市にある。
上掲記事によると、高額配当や元本保証などをうたってベトナム未公開株取引などへの出資金を募っていた。
全国の1万人以上から、計約350億円を集めていたとみられる。
ベトナムは、急速な経済発展とともに、銀行など国有企業を2006年に株式会社化して民営企業にした結果、株式市場が拡大して、新たな投資先として海外からの人気を集め、未公開株w取得して上場後に高値で売却するというファンドが多数設立された。
しかし、株式市場が未成熟であるため、リスクも大きい。
静岡県内の出資者は全国最多規模の1000人余に上る見通しであるという。
静岡県人は、騙されやすいのか、慾が強いのか、それとも余裕資金があるというのだろうか?
未公開株取引は、詐欺の一つの典型である。
09年5月9日の項:詐欺の類型(2)未上場株の譲渡先日も、「イー・マーケティング」という会社の社長らが、「必ず上場する」とウソを言って未公開株の販売代金を詐取したという報道があった。
同社は、「ニュー・リッチ」という富裕層をターゲットにした市場調査等を行っている会社だという。
JAMの場合、ベトナムという経済発展中の国で、かつ実相がよく分らない国としたところが、ミソだろう。
手口は、以下のようである。
JAM(株)「匿名組合」を利用し、「日経225株価指数取引」等により出資金を運用することで高利回り(年24~36%)の配当が毎月得られると称し、会員を募った。
また「配当の他に、人に紹介すれば紹介料が得られる」という謳い文句により、次々と新規会員を増やすシステムを採っていた。
被害者は、知人の勧誘などで「匿名組合」に加入し、当初は配当も得られていたという。
しかし、サブプライムローン問題の影響等を口実に、2009年1月末頃から配当額が下がり、原告らへの配当支払いは2008年5月分を最後に停止された。
http://plaza.across.or.jp/~fujimori/multi.html
千葉県警は、2月下旬、JAM社が国の登録を受けずに出資金を募っていたとして、金融商品取引法違反容疑で、同社の本社などを家宅捜索した。
押収資料を分析したところ、静岡県内に出資者が多いことが分かった。
本件では、マルチ商法の手口と複合しているところが、被害者を増やしている要因となっている。
JAMの商品を勧誘した人は、最初の段階で配当を受け取っている人もいるらしく、それで知人にもおいしい話をお裾分けしようとしたのではなかろうか。
しかし、そうそううまい話があるわけではない。
大元は、もちろん意図的に騙しているに違いないと思うが、運用に失敗したと詐欺を否認しているという。
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投稿: 2130 | 2015年7月12日 (日) 09時22分