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2009年5月 4日 (月)

詐欺の第一段階としての錯覚誘導

「M資金」話のような詐欺案件は、一般的にどういうプロセスを経るのか?
あるいは、これらの話を仕掛ける詐欺師たちは、どういうような行動をとるのだろうか?
山崎和邦『詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方 人はこうして騙される』中経出版(0511)は、詐欺と虚業の本質に迫り、そこから身を護る術を紹介しようという趣旨の書籍である。
著者の山崎さんは、著者紹介欄によれば、次のような経歴の持ち主である。

1937年シンガポール生まれ、長野県育ち。1961年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券㈱入社。1974年同社支店長、1980年同社を退社し、三井ホーム㈱九州支店長に就任。1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長、1997年三井ホームエステート代表取締役副社長を務める。2001年同社を退社し、駒澤大学経営学部講師等を経て、現在、武蔵野学院大学教授、産能大学講師、㈱アライヴコミュニティ非常勤取締役。
ウォールストリートクラブ日本代表。日本経済学会、景気循環学会、日本経営教育学会、日本ウズベキスタン協会、日本ビジネスインテリジェンス協会、全日本剣道連盟会員。
主な著書に『投機学入門』『あなたはなぜ株で儲けられないのか』(ダイヤモンド社)などがある。

山崎さんは、「はじめに」で、「現在、職業的大型詐欺師の主な稼ぎの場となっているのは、金融市場と不動産市場である」と書いている。
その金融市場と不動産市場をビジネスの場としてきた山崎さんは、詐欺師や虚業家たちの、ビジネスモデル、人となり、見せ場や正念場や修羅場などを見てきた。
彼らの何人かとは、現在でも親交を続けている、という。

詐欺には、日常見られる小口詐欺と非日常的な大型詐欺とがある。
「M資金」には、小口詐欺の要素もあるのかもしれないが、基本的には大型詐欺ということになるだろう。
山崎さんの経験や見聞は、どう一般化できるのだろうか?

はじめに、詐欺と虚業はどう違うか?
刑法では、詐欺罪について次のように規定している。

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
 2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二
 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html

つまり、詐欺は、「人を欺いて」ということが基本的な要件である。
相手からの騙しとろうとする意図が最初からあり、当初から違法性がある。
これに対し、虚業は、当初から違法性を含んで行うとは限らない。
商取引上の駆け引きや、自社商品の強調・誇張を社会通念上の許容範囲を超えて行った結果、虚業となったという場合が少なくない。

それでは、詐欺はどのようにして行われるか?
詐欺の第一段階は、サギろうとする相手(これを「カモ」と称する)を、ごく自然に錯覚に導くことである。
手品や奇術も、意図的に錯覚に導くという点において、共通性がある。
手品や奇術には、タネやしかけのあるものと、タネやしかけはなく、術者の熟練したパフォーマンスのみで行うものとがある。

大型一流詐欺師は、手品や奇術の熟練した芸と似ている。
長年かけて、カモの属するハイ・ソサエティの生活様式を身につけ、実業家の行動様式を模倣する習練を積む。
その結果、一般の人々よりもはるかに上品で見識があるように見える。
博学であり、話していて楽しく、タメになることも多い。
日常は、嘘やあてずっぽうを言わない。
話題の中味は、一般の人よりもはるかに正確である。

そうしたことの結果として、大きなヤマにおいて、人を錯覚させることができるのだ。
いかなる詐欺も、カモに対する錯覚誘導工作からはじまる。
手品や奇術の「タネモノ」のように、タネやしかけを用いる場合もある。
一流詐欺師は、小道具は本物を使う。
舞台装置も、帝国ホテルや五つ星のホテルの会議室や客室を使う。
M資金詐欺では、都市銀行の役員室が使われた例もある。

一流詐欺師の要件は、他人に信用されることである。
言い換えれば、この人と話していると、とても気持ちよくて楽しい、と思わせることである。
そこまで済めば、錯覚誘導工作は半ば成功したといえる。
この段階までは、何の違法性もない。

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コメント

思いだしました。20年くらい前になりますか、M資金からアプローチがありました。当時上場会社社長の立場だったので、資金のオファーという形を取っていたのです。まだ存在するかどうか知りませんが、たしか東京駅八重洲口の八重洲ホテルと銀座第一ホテルだったかなぁ、その2カ所を行き来するよう、面談の設定ができあがっていました。

実に奇妙な体験でした。いや、もちろん途中でお引き取りいただきましたので被害はありません。

投稿: いのうえ | 2009年5月 5日 (火) 08時12分

いのうえ様

コメント有難うございます。
私の知り合いの某上場会社元社長も、同じような体験があるそうです。
資金の元は産油国のファンドで、新規事業展開のための第三者割当増資の受け皿になる、という話だったようです。新規事業に関連した実験プラントまで用意するなど、かなり手の込んだ演出だったと聞きました。
現在でも、多数のM資金ブローカーが都内を徘徊しているようです。

投稿: 管理人 | 2009年5月 5日 (火) 12時07分

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