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2009年5月25日 (月)

政府の相対的なサイズと財政出動の効果

「100年に1度」という経済危機の中で、政府が大規模な財政出動に踏み切っている。
人為的な供給の増加により、景気の回復・雇用の創出を図ろうとするものである。
ケインズ政策の復活と言っていいだろう。

国の姿を論じるときに、「大きな政府」か「小さな政府」か、ということが問題になる。
アダム・スミスは、「自由競争」と「合理性」によって市場経済は最大のパフォーマンス(需要と供給の均衡=パレート最適,Pareto Optimality)を発揮するので、必要以上に国家が人為的に市場に介入すべきではないと考えた。
いわゆる「神の見えざる手」である。
しかし、もちろん市場だけですべてが解決できるわけではない。

公共性のある経済活動の多くは、営利企業が手を出そうとしない不採算事業である。
市場原理だけに委ねていると、社会的弱者への社会福祉事業や社会復帰の支援が手薄になってしまうことになる。
市場原理だけで、貨幣や資源を分配し続けていくと、特定の企業や個人に異常に偏って富が蓄積される可能性が高くなる。
いわゆる格差である。

聖域なき構造改革を掲げた「小泉改革」は、まさに「小さな政府」論をベースにしたものだったと考えられる。
郵政民営化や道路公団民営化などに象徴されるように、政府による公共サービスを民営化などにより削減し、市場にできることは市場にゆだねることを主張したと理解していいだろう。
その反映もあって、自民党と民主党との比較でいうと、イメージ的には、自民党が小さな政府、民主党が大きな政府という感じである。

しかし、「小さな政府」の実現をめざしたはずの小泉政権下で、国家予算のGDP比が高くなっている事実には注目すべきだろう(図は、産経新聞09年5月24日)。2
小泉政権は、平成13年4月~18年9月である。この間の政府の相対的な大きさは、平成18年度の一般会計と特別会計の合計額は、GDPの70%に達している。
国債の借り換え償還分を差し引いてもいても、50%近く、平成の初期頃に比べると、著しく大きくなっている。
小泉改革は、決して小さな政府の方向に向かったわけではなかったのだ。

一般会計と特別会計の関係も問題が解決されていないと考えるべきだろう。
特別会計は、国が直轄する道路、郵便、保健、水資源開発など特定の事業を例外扱いにして、一般会計の外に置いたものだ。
国会で議論されるのは、一般会計だけで、特別会計は一般会計の2~3倍の規模であるにもかかわらず、情報公開も余り行われて来なかった。
小泉改革では、特別会計の見直しと再編も進めた。
しかし、そのシンボルのはずだった郵政改革で、「かんぽの宿」のような事態が起きている。

もっとも、小泉元首相自身は、ほとんど政策音痴だったという説がある。
以下は、毎日新聞政治部の伊藤智永記者の文章の抜粋である。
http://www.asyura2.com/0601/senkyo21/msg/850.html

5年前、小泉純一郎首相が自民党総裁に選ばれることが確実になった前夜、山崎拓前副総裁から聞いた小泉評は忘れがたい。
……
「いいか、君たちびっくりするぞ。30年も国会議員やっているのに、彼は政策のことをほとんど知らん。驚くべき無知ですよ」
すぐにそれは証明された。
……
内政の小泉改革も、郵政民営化を除きほとんどは最初の総裁選公約になかった。例えば1年目に好評を博した特殊法人の予算1兆円削減は、総裁選のライバルだった橋本龍太郎元首相の公約にあったのを、就任後ちゃっかり横取りした。指示に驚く自民党や財務省の幹部らに「(政策通の)ハシリュウが公約したんだからできるはずだ」と言ったそうだ。道路公団など7法人を重点に指名したのは「大きいから」だった。良くも悪くもひらめき型なのだ。
政策の大事な説明が、がっかりするほど薄っぺらい。でも、だから分かりやすい(本当は何も分からないのだが)。小泉首相が一貫して「政治を身近にしてくれた。政治に関心を持つようになった」という理由で支持されてきたのは、よく言われるメディア戦略より、政策を恐ろしく単純化した効果が大きかった。

まあ、この論評の適否はそれぞれの判断があるだろう。
しかしながら、果たして何が改革されたのだろうか、という思いを禁じえないのは私だけではないだろう。

そう言えば、議論のあった定額給付金もほぼ給付されたのだろうが、2兆円を使った効果はどうなのだろうか?
わが家でも、既に銀行の口座に振り込まれてはいるが、だから何か特定の支出をしようということにはならない。
もちろん、その分家計は潤っているのであるが、正直なところ、何に使おうかという話題にすらなっていないのだ。
財政出動も必要なのだろうが、「ワイズ・スペンディング=賢い支出」であるのか否かの評価システムが必要ではないのだろうか。

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コメント

賢い支出ではありません。日本の国が縮んでしまいました。そして、国の富が海外に流出しているかのようです。

投稿: Orwell | 2009年5月25日 (月) 23時40分

Orwell様

コメント有り難うございます。
総選挙も間近いので、財政のあり方、あるいは国のあり方について、じっくり検討したいと思います。
今後とも宜しくお願いします。

投稿: 管理人 | 2009年5月31日 (日) 11時13分

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