虚業の類型(4)不祥事対応と結果としての虚業
実業の精神ではじえmたものが、「勇み足」のレベルを超えて商道徳を逸脱すると、虚業ということになる。
その例として、山崎和邦氏は、『詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方 人はこうして騙される』中経出版(0511)で、シティ・バンク在日支店の業務停止処分をあげているが、具体的な内容については触れていない。
2004年9月のシティ・バンクの業務停止事案についてみてみよう。
金融庁は十七日、米大手金融グループのシティバンク在日支店に対し、多数の法令違反が認められたとして、富裕層を対象に資産運用(プライベートバンキング=PB)業務を担当する東京・丸の内支店と名古屋、大阪、福岡の各出張所を合わせた四拠点を九月二十九日から一年間の業務停止(預金解約など既存取引の解消業務は除く)とし、十七年九月三十日に認可を取り消すと発表した。また、九月二十九日から十月二十八日までの一カ月間、個人金融本部の外貨預金業務にかかる新規顧客との取引業務の停止も命じた。
認可の取り消しは、平成十一年のクレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行東京支店への免許取り消し処分に次ぐ厳しい処分。これにより、シティバンクは事実上、日本でのPB業務から撤退を迫られることになる。
金融庁が重い処分に踏み切ったのは、同庁の検査を通じ、PB業務で法令違反や不適切な取引が多数見つかったため。「今後の業務の継続は不適当」と認定し、外貨預金業務も内部管理体制が整っておらず、「業務の改善に専念させる必要がある」と判断した。
具体的な処分理由としては、在日支店のPB業務では、顧客や取引内容の事前調査や貸し出し審査などが「実質的に行われていない」と指摘。有価証券の相場操縦などの罪で起訴された被告人らへの多額の資金流用を許す貸し出しにつながるなど、「法令順守態勢」の不備を指摘した。
さらに(1)マネー・ロンダリング(資金洗浄)と疑われる取引を許すなど「本人確認義務」違反(2)顧客に対し、金融商品のリスクの適正な説明を行わず勧誘販売をする「情報提供義務違反」-なども発覚した。
http://www.asyura2.com/0406/hasan36/msg/777.html
事実上PB業務から撤退せよ、という厳しい処分である。
偽装国家と呼ばれるように(07年9月2日の項)、企業の不祥事があとを絶たない。どの企業においても、業務遂行上ミスが発生することは避けられない。
そのミスが株主や、顧客などに迷惑をかけるものであったら、速やかに公表して善後策を講じなければならない。
問題は、事後の対応である。
日本ブランド戦略研究所が行った「企業・機関の事件・事故に対する消費者の意識調査」において、「事件・事故を起こした後、企業の信頼回復にとって有効であると思う対応」について質問している。
結果は以下の通りで、 消費者が重要視している対応は、情報公開が第一である。
同調査報告書では、基本は普通のビジネスと同じで「相手のことを考えて行動する」ことに他ならない、としている。
また、具体的な不祥事と事後対応についての評価をみると、最も評価の高いのは松下電器産業(現パナソニック)のFF式石油暖房機の不具合への対処であった。
評価の低い事案として、社会保険庁やNHKがあるのは、納得的ではあるが、同時に、納得してしまってはいけないのだろうと思う。
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