大型詐欺の事例(6)CIA準備金とガリオア・エロア資金
アメリカ政府が日本を共産主義に対するアジアの防波堤にすべく、自民党とその幹部に資金を提供した、とされている。
たとえば、1994年10月8日付のニューヨーク・タイムズ紙は、米国CIAが1950年代から60年代にかけて、自民党に「防共資金」として多額の資金援助を行っていたとされる。
CIAの資金に関しては、ロッキード事件との関連(09年3月1日の項)、M資金との関連で既に触れた(09年4月30日の項)。
ニューヨーク・タイムズ紙の内容は、10月10日の各紙で報道されている。
CIAは世界最大の謀略機関としての性格を持っている。
巨額の資金と組織を駆使し、アメリカの戦略に沿って世界各国の情報を収集するだけでなく、場合によっては政権転覆をも厭わない。
もちろん、そういうことは非公然活動である。
そのための予算はどう措置されているのだろうか?
非公然活動の必要性がCIA長官に認められると、「CIA準備金」が動くということらしい。
「文藝春秋」の1994年12月号に、大野和基「新証言CIA対日秘密工作の全文書」と題する記事が掲載された。
同記事によれば、1958年4月11日に、自民党への資金提供が検討された。
55年体制が成立し、「保守系の与党・自民党」対「革新系の野党・社会党」という図式が確定した時代である。
時の蔵相は、佐藤栄作。佐藤は、社会党の勢いを抑えるために「防共」という名目で、アメリカに選挙資金を要請した。
そもそも、自由党と日本民主党の保守合同による自由民主党の結党資金にも、CIAの資金が流れているということである(09年3月1日の項)。
CIA準備金なるものが、日本の政界に流れ込んでいたのはおそらく事実なのだろうが、それは極秘事項とされているから、そこから詐欺話が誕生することになる。
たとえば、資金の受け取り役として、川島正次郎元幹事長の名前が出てくる。
川島氏は、その資金を株式市場で倍増させようとしている。
そのための銘柄は、○○だ、というようにである。
この話を信じた投資家(投機家)が、○○株をいっせいに買えば、当然○○は値上がりする。
そうすると、最初はこの話を信じなかった人たちも、追随して買いに走り、さらに値上がりする。
多くの人が買ったところが天井である。
山崎和邦『詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方 人はこうして騙される』中経出版(0511)には、「ガリオア・エロア資金」に関する話も照会されている。
「ガリオア・エロア資金」に関しては、戦後の日本に存在した秘密資金と1つとして、「G資金」と呼ばれていることについて、既に触れたことがある(09年4月16日の項)。
「ガリオア(占領地域統治救済資金)・エロア(産業復興資金)」資金の返済に関して、日米の間に金額の食い違いがあった。
その差額がどうなったのか?
「M資金」の源流となったという説、自民党の選挙対策費として株式市場に流入したという説、官僚の政治家転出時の資金としてファンド・マネジャーに預けられたという説、等々がある。
つまり、得体のよく分からない資金の話があれば、詐欺師たちは、それを応用動作でさまざまに活用する、ということである。
山崎氏は、上掲書で、「第二次大戦戦略物資」についても触れている。
石橋湛山委員長、世耕弘一副委員長の「隠退蔵物資等処理委員会」(いわゆる世耕機関)の活動については、「M資金」との関連で触れた(09年1月16日の項、4月21日の項)。
世耕機関の摘発にも拘わらず、隠匿物資はごく一部しか見つからなかった。
世耕機関は、47年8月に廃止になっている。
隠匿物資がほんの一部しか出てこなかった理由について、毎日新聞社会部出身の取違孝昭氏は、官僚とアングラ紳士の結託と推測している。
山崎氏も、「M資金」に代表される簿外の伏流資金について、その不存在を証明することはできない、としている。
「ある」ことは一例を示せば足りるが、「ない」ことを照明することは至難である。
それが「伝説」を生む下地になっていることは事実だろう。
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