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2009年5月22日 (金)

女子高生と濃厚接触?

女子高生と濃厚接触?
一瞬何のことかと思った。
濃厚接触って、どんな接触だ?

何ということはない、新型インフルエンザの話だった。
アメリカから帰国した八王子市と川崎市の女子高生2人が、新型インフルエンザに感染していたことが分かり、この女子高生と同じ飛行機の便で、近くに座っていた乗客17人を追跡調査するという報道である。
つまり、「近くに座っていた人=濃厚接触者」というわけである。
この「濃厚接触者」は、いずれも機内の検疫では異常を訴えていなかったが、女子高生2人がアメリカ滞在中に感染した可能性が高く、とすれば「濃厚接触者」も既に感染している恐れがあるということだ。

まったく新型インフルエンザというのは人騒がせである。
当初は、豚インフルエンザと呼ばれていた。
いつの間にか、新型インフルエンザと呼ばれるようになった。
最初に見つかったのが豚ではない、ということのようだ。
それでは、新型インフルエンザという呼び方は適切だろうか?

新型はいつか新型ではなくなる。
その時には、どう呼べばいい?
そんなことよりも、そもそも今言われている新型インフルエンザは、どうも新型ではないらしい。
新種ではなく、ありふれた(弱毒型の)A型インフルエンザの亜型にすぎない、ということである。
http://openblog.meblog.biz/article/1528167.html

新型か亜型かは別として、このインフルエンザはどれ位怖いのか?
ゴールデン・ウィークには、病院が一斉休診したという。
病院が感染を恐れるほど怖いものなのか?
関西で感染者が見つかり、休校措置が取られた。
止むを得ないことなのだろうが、保育園が休園になって、困っている保護者もいるらしい。

判断に迷うのは、イベントなどの担当者だろう。
エイベックス・マネジメントは、所属する浜崎あゆみさんや大塚愛さんなどが大阪や神戸で予定していた公演の中止を決定した。
一方で、宝塚歌劇団や吉本興業の劇場などは、従業員にマスク着用を義務付けるなどして、公演を続けるという。

桂三枝さんが会長を務める上方落語協会は、天満天神繁昌亭で使える割引券のセットを発売するという。
新型インフルエンザ騒動で商店街の客が減って元気がなくなっているので、「元気な人はマスクをして落語に来て欲しい」ということだ。
その意気やよし、と言いたい気持ちもするが、どこまで慎重に考えるべきか、素人には判断が難しい問題である。

女子高生の話に戻ると、川崎市の女子高生は、今月11日から18二地まで、ニューヨークで開かれた模擬国連会議に参加した。
19日午後成田着の便で帰国したが、機内で発熱や悪寒があって、検疫で申告した。
簡易検査では院生だった。
帰宅後熱は下がったが、20日未明から発熱して市販薬では熱が下がらなかったため、都の発熱相談センターに連絡した。
都で詳細な検査を行った結果、新型陽性と確認された。

成田からリムジンバスで京王多摩センター駅まで行き、京王線、JR横浜線を乗り継いで帰宅したという。
舛添厚生労働大臣等は、当初、空港の検疫で感染者が発見されたときは、水際で国内侵入を防止できたと自慢げだった。
しかし、潜伏期間があることを考えれば、いずれ国内で発症者が現れることは必定だったと考えるべきだろう。
今回の女子高生だって、帰宅までの間、大勢の人と濃厚接触しているはずだ。
厚労省は、女子高生の飛行機内での「濃厚接触者」の所在確認を始めたというが、バスや電車などの公共交通機関については、とても追跡しきれないだろう。

厚労省は、対応を第二段階の「国内発生早期」から、第三段階の「感染拡大期、蔓延期」へ切り替えることを検討するという。
対応は、念入りに行うにこしたことはないだろう。
しかし、その前提の認識はどうなのか?
毒性の強さは? 感染力の強さは?
現時点では、どうやら当初考えられていたよりも、毒性は弱いものらしい。
国の行動計画も、「強毒性」を前提としたものだったものを、「弱毒性」の対応に変更するという。

「強毒性」と考えられていたこととも関連するのだろうが、感染した人が、何か悪いことをしたかのような報道がされているようにも感じられた。
何となく、魔女狩り風である。
もちろん、感染者が、意識して感染しているはずはない。
つまり、故意ではない。

それならば、過失があったのだろうか?
女子高生らのアメリカでの具体的行動が不明なので何とも言えないが、感染したと推定される時点では、よもや、ということだったのではないだろうか。

女子高生らの責任性はどうか?
報じられている範囲では、感染したことの責任を問うのは酷のような気がする。
異端を排除する心理が働いていたとしたら、憂慮すべきことだろう。
異端はしばしば新しい価値の創造者である。
それこそ、新型の可能性が高い。

新型とみるか、亜型とみるか?
これも、なかなかやっかいなような気がする。
AとBとを、同じとみるか違うとみるかは、視点によって変わってくる。
○●は、形は同じであるが、塗りつぶしているか否かによって違う。
これは、同じか、違うか?
○●□は、皆違うのか?
新型のインフルエンザか否かを判断するというウイルスのたんぱく質構造も、似たようなものだろう。

危機管理における情報管理(開示と保秘のバランス)は難しい。
感染の疑い例の公表を巡って、中田横浜市長と舛添厚労省との間で対立があった。
私は、舛添大臣のテンションが上がり過ぎと感じたが、「危機管理にやり過ぎはない」と言われれば、そうかも知れないという気もしてくる。
「危機管理にやり過ぎはない」としても、感染者を差別するような言動は厳に慎むべきだろうと思う。

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