大型詐欺の事例(3)「遠山青峰型」詐欺
人は非日常の生活に対する憧れを持っている。
例えば、南太平洋の島で、のんびりと過ごしたいなどと思う。
そして、身近なもののリスクははっきり認識できるが、手の届かない遠くにあるものは美しく見える。
近くに行けば沼地もあるし、蛇もいるし、岩はごつごつしている。
しかし遠く離れて見れば、青い山が白い雲の上にあるだけで美しく見える。
富士山なども同じである。
遠くから見れば、霊峰と呼ぶにふさわしい美しい山である。
しかし実際に登って見れば、単調でゴミが多かったり、山小屋はすし詰めだったりでガッカリということが多い。
山崎和邦氏は、このように、遠くにあるために本来のリスクが見えなくなってしまっていることを、「遠山青峰型」と命名している(『詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方 人はこうして騙される』中経出版(0511))。
バブルという現象が発生するのも、一種の「遠山青峰型」の現象であろう。
バブル史上において有名な「南海泡沫事件」というものがある。
Wikipedia (09年4月9日最終更新)では、以下のように解説されている。
南海泡沫事件(なんかいほうまつじけん、英語: South Sea Bubble)は、1720春から秋にかけてイギリスで起こった常軌を逸した投機ブームによる株価の急騰と暴落、およびそれに続く大混乱を指す。のちにイギリスの初代首相と見なされる政治家ロバート・ウォルポールがこの混乱を収拾、政治家として名をあげる契機となった。バブル経済の語源になった事件である。
南海会社(The South Sea Company, 南洋会社とも)は1711年にトーリー党のロバート・ハーリーによって設立された。イギリスの財政危機を救うため、国債の一部を南海会社に引き受けさせ貿易による利潤でそれを賄う目的でつくられた。
しかし、海難事故等で本業が振るわず、金融会社に業種転換し、新たなビジネスモデル(南海計画)を考案した。
当時のイングランドでは、中産階級が投資先を探している状態で、市場に資金がだぶついていたこともあり、南海会社の株価は急成長をとげた。
しかし、政府の規制等によって、南海会社の株価は急落した。
同社の株価の推移を示す。
南海会社事件では、ニュートンやヘンデルなども経済的に大きな打撃を受けたといわれる。
ニュートンは、『天体の動きなら計算できるが、人々の狂気までは計算できなかった』と述べたとされている。
日本でも、バブル経済の只中に、環太平洋リゾート計画などが打ち出された。
ハワイ、タヒチ、フィージー、ニューカレドニア、ゴールドコースト……。
まさにドリームプランの名に相応しい。
しかし、イギリスの南海計画と同じように、バブルの泡のように消える結果となった。
環太平洋リゾート計画などは、ロマンに満ちていると言えば言えるが、やはり計画そのものが非現実的だったと考えるべきだろう。
もちろん、この場合も、最初から騙すという意図ではないのだから、詐欺罪には相当しないということになる。
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