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2009年4月30日 (木)

M資金とCIA

安田雅企『追跡・M資金―東京湾金塊引揚げ事件』三一書房(9507)に、1994年10月10日の各紙に報道された記事が紹介されている。
要旨は、米ソ対立の冷戦下の1950~60年代にかけて、CIAから自民党に、数百万ドルの資金援助がなされていた、というものである。

上掲書では、主として朝日新聞の記事から、以下のような内容を取り上げている。
(1)1955年から58年まで、CIAの極東政策の担当者だったA.C.ウルマー・ジュニアが、自民党に資金援助をしていたことを認めた。
(2)1966年~69年に駐日アメリカ大使を務めたジョンソン大使が、69年まで援助が続いていたことを認めた。
(3)1958年7月29日、駐日アメリカ大使だったマッカーサー二世がアメリカ国務省宛に送った手紙に、「佐藤栄作蔵相(当時)が、共産主義と戦うために資金援助が必要だ」と書かれていた。
(4)アメリカの内部文書で、CIAの中に、1958年4月11日に、自民党の選挙資金工作担当の特別グループが作られていたことが発覚した。

上掲書では、この年の6月岸信介政権が発足していることに注意を喚起している。
岸は戦犯で巣鴨プリズンに収容されていたが、東条元首相らが絞首刑になった翌日、釈放されている。
同時に釈放されたのが、児玉誉士夫や笹川良一らである。
岸は、釈放後、親米一辺倒になるが、安田氏は、「弱みを握られたのではないかと疑いたくなるほど」と表現している。
児玉誉士夫が、ロッキード社の秘密代理人であったことを考えると、あながち当てずっぽうの推測ともいえないと思う。

マッカーサー大使が東アジア担当のパーソンズ国務次官補に出した手紙では、佐藤栄作は、1957年にも資金要請をしている、としている。
安田氏は、佐藤栄作が、日米安保条約改定交渉に入ろうとする時期に、このような要請をした背景に、東京湾から引揚げられた金塊の存在があったのではないか、と推測している。

マッカーサー大使は、安部正人という人物に、「水谷の言っていることは正しいが、それを通すと日本国は太平洋に沈んでしまう」と警告している。
マッカーサー大使は、ダグラス・マッカーサー元帥の子供で、忠実なフリーメーソンであり、この金塊がユダヤ機関であるCFR(外交評議会)に極秘に収まって運用されていることを知る立場にあった、としている。
金塊とCFR,ユダヤ機関との関係については、09年2月15日の項2月23日の項で触れた。
水谷とは、新日本党総裁だった水谷明のことで、「金塊返還同志会」を作って金塊返還運動に最も熱心だった人物である(09年1月16日の項等)。
安部正人とは、マッカーサー元帥に影響力があるとして水谷が紹介された人物で、安部仲麻呂38世として大分県に生まれたとされる人物である。
江戸城明け渡しの西郷・勝階段を斡旋した山岡鉄舟の身内で、インドのガンジーとも親しく、一緒に逮捕されたことがある。
マッカーサー元帥が武官として駐日大使館に勤務していた頃、鉄舟の家に書生として住み込んでいた安部はよく会っていた。
マッカーサー元帥の占領行政のコンサルタントとして活動し、天皇を処刑し、天皇制を廃止しようとしていたマッカーサーを翻意させた人物とされている。

上掲書では、CIAが自民党に資金を出したのは、日本の権力者の当然の要求で、アメリカ政府は答えざるを得なかったのだ、としている。
さらに、アイゼンハワーを大統領にしたのはユダヤ資金の力で、内閣の大半はCFRのメンバーか関係者であり、むしろアメリカ側から資金提供を言い出し、金塊奪取を隠して日本を懐柔するために支払った可能性も考えられる、ともしている。
毎年百万ドルずつ5年間渡したとすれば、当時のレートの360円/ドルで、物価上昇率を10倍とみれば、合計1800億円となり、引揚げた金塊の評価額は不定だが、2200~2300億円という説が妥当な線であり、とすれば反共政権を維持するために、東京湾から揚がった金銀塊をCIAの秘密ルートを使い返済した、という想定が成り立つことになる。

上掲書は、以下のような言葉で締めくくられている。

CIAからの秘密資金はケネディ、フォード政権に至るまで、日本の政権党に渡していたことが、、やがて秘密外交文書の公開やら米国側要人の証言で明るみに出てきた。にもかかわらず国会もマスコミも、間もなく取り上げなくなった。
社会党には旧ソ連共産党からカネが渡っていただけでなく、CIA要員が身分を隠して侵入していた。社会党だけでなく、米諜報機関はあらゆる分野に浸透していたから、下手に突つくと自分の身も危険になるということなのか。あと数十年も経てば、東京湾金塊事件の関係者は老いたり死去したりして、すべての歴史的事件と同様解明されずに消えていくことだろう。

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