水の都・三島と地球環境大賞
三島市は、「水と緑と人が輝く夢あるまち・三島」を標榜している。
三嶋大社という由緒ある神社があるためだろうが、歴史的な資産も少なくない。
その1つの「三島暦」については既に触れたことがある(07年11月12日の項)。
三嶋暦は、印刷(木版)の暦としては最も古い物であるが、同時に印刷の仕上がりがきれいで、印刷暦の代名詞になっていた。また、連歌師として名高い飯尾宗祇が、東常縁から「古今伝授」を受けたとされている(08年8月9日の項)。
水と緑については、楽寿園という緑豊かな公園が、JR三島駅のすぐ近くにある。
明治維新で活躍された小松宮彰仁親王が明治23年に別邸として造営されたもので、昭和27年より市立公園として三島市が管理運営している。
その楽寿園から流れ出ている源兵衛川は、平成20年に、環境省の認定する「平成の名水百選」に選ばれている。
源兵衛川に隣接する蓮沼川にも、天智天皇が使用したとされる漏剋のレプリカや、地元出身の彫刻家の作品などが設置されていて、訪れる人を楽しませてくれている。
そしてこの度、これらの水空間の保全活動を推進する市民グループが、フジサンケイグループが主催する「地球環境大賞」の「環境地域貢献賞」を受賞した。
「地球環境大賞」は、1992年に、「産業の発展と地球環境との共生」をめざし、産業界を対象とする顕彰制度として、財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパン(名誉総裁・秋篠宮殿下)の特別協力を得て、創設された。
持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品・商品・サービス・技術などの開発、環境保全活動・事業の推進と21世紀の社会システムの探究、地球環境問題に対する意識の一段の向上などの面で顕著な成果を上げ、社会の模範となる功績を収めた企業、自治体、学校、市民グループなどを表彰するとするものである。
http://www.fbi-award.jp/eco/about/index.html
その第18回授賞式が、4月21日に行われた。
今年の大賞の受賞者は、大和ハウス工業で、埼玉県越谷市の「越谷レイクタウン」における自然と調和した街づくりの取り組みが評価されたものである。
JR武蔵野線の「越谷レイクタウン」駅から徒歩で3分の場所にある同タウンでは、炭酸ガスの排出量削減に向け、太陽や風など自然の力を利用することに注力している。
太陽光発電の積極的利用などは当然のことだろうが、面白いのは「風」への着目である。
街全体の風の流れを解析し、道路形状や住宅の窓の位置などを調整したという。
また、街中に高垣と呼ばれる木の壁を巡らせ、冬の北風を防ぐ工夫が凝らされている。
住んでみたい街という感じがするが、実際の住み心地はどうなのだろうか?
このような街全体としての省エネ・省資源の試みは、今後とも拡大していくことと思われる。
環境地域貢献賞を受賞した市民グループは、三島市を中心に活動する「特定非営利活動法人グラウンドワーク三島」である。
活動内容は以下のように紹介されている。
市民・NPO・企業・行政とのパートナーシップによる実践的、持続的なグラウンドワーク活動を通して、「水の都・三島」の原風景を劇的に再生・復活させ、環境の再生が地域の再生へと発展する先進的な地域づくりを推進。源兵衛川の水辺再生、三島梅花藻の再生保護活動など、これまでに40カ所以上のプロジェクトを実践し、生活者の視点に立った現場主義的なきめの細かい多面的な「市民公協事業」に挑戦している。
源兵衛川は、写真に見るように、子供たちが水遊びするのに格好の空間となっている。
しかし、かつては茶碗のかけらなどが散乱する汚い川だったらしい。
三島市は、富士山の伏流水の湧き出るところで、かつては豊富な水量を誇る池や河川が多かった。
高度成長期に、上流域での工業立地や人口増大のために取水量が増えて、三島市内に湧出する水量が減ってしまった。
楽寿園内の小浜池などは、かつては常時湛水の池だったが、現在は、枯山水のようになってしまっている。
それでも、グランウンドワーク三島などの活動によって、「水のある景観」が維持されている。
三島市民は、経済活動が優先されていた時代に、全国の多くの地域が、誘致活動に積極的だった石油コンビナートの進出を阻止した実績を持っている。
その伝統が現在も続いているということだと思う。
(図はすべて上掲「地球環境大賞」サイトから引用)
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