過去最悪という景況感と国家改造のあり方
日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によれば、景況が、同調査が開始された74年5月以来最悪であることが示された。 大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、マイナス58で、第一次石油危機後の1975年5月(マイナス57)を下回るものだった。
DIの悪化は、6四半期連続であり、昨年12月の前回調査からの落ち込み幅は34ポイントで、過去最大だった昭和49年8月の26ポイントを大幅に上回った(図は、日本経済新聞4月1日夕刊)。
DIというのは、業況が「良い」と答えた企業から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数である。
大企業では、全業種で景況感が悪化しており、これは7年ぶりのことだという。
2009年度計画は、売上高が前期比6.5%減、経常利益が19.7%減で、3月調査では初のマイナスとなった。
大企業非製造業のDIはマイナス31で、1999年3月以来の水準だった。
もちろん、大企業が悪ければ中小企業もいいはずがなく、DIは、製造業がマイナス57、非製造業がマイナス42だった。
3月31日の東京株式市場は、日経平均終値が、8109円53銭と、昨年3月期末に比べ35.3%も値下がりした。
東証一部上場企業の株式時価総額は、1年間で137兆円目減りした。
大手銀行6グループの保有株に3400億円の含み損が発生し、一般企業の保有株の含み益が80%以上減少した。
3月10日に付けたバブル崩壊後の最安値(09年3月10日の項)からは、1000円以上回復しているが、3月期決算が発表される5月の状況が心配されている。
含み損の発生した銀行が、貸し渋りを強めれば、企業の資金繰りはさらに悪化する。
倒産の危機も増大することになるだろう。
世界的な景気後退に伴って、戦後最悪の景況ということになる。
企業心理がこのような状態では、今後もリストラなどが進むことが懸念される。
消費がさらに悪化して、景気悪化が増進するという悪循環に陥ることになるだろう。
直近の景況の悪化は、在庫調整による部分が大きいのではないかと考えられるが、調整が一巡するのは何時頃で、その後の見通しはどうか?
短観によれば、大企業製造業の3ヵ月後の先行き見通しは、改善の方向にある。約3年ぶりである。
トヨタ自動車やパナソニックなど、ドラスティックに生産調整をした企業は、在庫調整がほぼ完了したとみられる。
日本経済を支えてきた外需は、今後とも多くを期待できないだろう。
とすれば、内需振興を図ることに政策的資源を集中させるしかない。
しかし、日本という国は、宿命的に資源に恵まれない国だという現実がある。
そのため、技術力をベースにした加工貿易という立国路線をとらざるを得ない。 中長期の産業構造の変化については、09年2月17日の項で触れた。経済変動と産業構造の転換の様相を示した図を再掲する。
日本という国の構造のあり方が問われているわけであるが、構造改革と言っても、言うは易く、ではどうしたらいいかということになると、なかなか明快な解は見つからないだろう。
単に経済政策の問題として考えるのでは不十分だろう。
日本株式会社と呼ばれるような官民一体的な政治経済のあり方をどう変えていくのか、国家改造というテーマに結びついてくるように思われる。
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