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2009年4月28日 (火)

ユダヤ資金と富士製鉄事件

高野孟『M資金-知られざる地下金融の世界』日本経済新聞社(8003)には、昭和42(1967)年、水田大蔵大臣の時代に、ロスチャイルドを中心としたユダヤ財閥の資金が日本に流入した、という「根強い噂」についての検討が加えられている。
原資は100億ドルであるが、100億ドルのキャッシュが持ち込まれた、というわけではない、といくつかの融資話に関与したとされる高級ブローカーは語る。
それは、在日外資銀行が管理している石油メジャーズの日本での売り上げを裏金で運用するとか、日本企業が東南アジアで投資するについて、シンガポールの華僑グループからの振り替え融資の形をとるとか、形態はいろいろあるが、100億ドルの融資枠が設定されたということだ、と説明する。

ユダヤ財閥は、昭和42年の時点でベトナムに見切りをつけて、アジアの冷戦は終わるとみた。
これからは、中国の資源と市場をどう抑えるか。
ニクソンがベトナムをあきらめて、グアム・ドクトリンを発表したのが昭和44年、キッシンジャーの対中国忍者外交が昭和46年だった。

有名なM資金話として、富士製鉄事件がある(09年4月17日の項)。
上掲書には、この事件の顛末が詳しく記述されている。
おおよそ、以下のような内容の事件である。

昭和45年9月13日付の『毎日新聞』は社会面の大半を費やして、富士製鉄をめぐる詐欺事件を報道した。
合併前の富士製鉄を舞台に、架空の「5000億円特別融資」話をデッチ上げ、その斡旋料として、125億円が入るともちかけて、一流企業の社員から2200万円を詐取したという事件が起きた。
警視庁は、一味の1人を8月下旬に逮捕し、中心人物を全国指名手配した。
捜査の過程で、富士製鉄だけでなく、日本興行銀行、大蔵省、日銀などの名前を勝手に使い、融資交渉があったかのような怪文書を作成し、「リベートを寄こせ」という趣旨の内容証明を郵送したり、自宅を訪問したりして嫌がらせを繰り返すなどの、壮大な詐欺事件を演じていたことが分かった。

指名手配された中心人物は、山本徹こと山崎勇という人物である。
山崎らは、昭和44ン1月、ユダヤの国際組織フリーメーソンの極東平和基金から、興銀を経由して富士製鉄に5000億円を融資した。
その証拠として、富士製鉄の藤木竹雄専務の署名・捺印入りの融資依頼書と念書、交渉経過を記した64ページの記録などを持ち歩いていた。

毎日新聞の論調は、「途方もないデッチ上げ」「大サギ劇」ということで終始していた。
しかし、この記事には、不可解な点がいくつかある。
第一に、根も葉もない話にしては、山崎のリベート要求への執着があまりに強い。
富士製鉄側も、山崎の半年間のおよぶ「いやがらせ」に断固たる態度をとらずに甘んじている様子が窺える。第二に、毎日の記事中に、山崎の持ち歩いていた「経過報告書」に、元農林中金N部長が登場しているが、当のN氏は、「たしかに富士製鉄を訪れ、藤木専務の念書を受取、山本(=山崎)に渡したと語る、という箇所がある。
N氏というのは、農林中金の業務部長を務め、昭和35年に退職した野崎正良という人で、信頼できる人物と考えられる。
彼が、藤木念書が本物であるとするならば、毎日の記事の論調が引っくりかえる可能性があるにも拘わらず、毎日は、この重大証言を黙殺してしまっている。
第三に、毎日の報道が出てから10日後の9月23日に山崎は逮捕されたが、3週間後に処分保留のまま釈放されている。
これだけの大サギ劇を演じているのだから、私文書偽造か恐喝未遂ぐらいには問えたはずで、2200万円を詐取された「一流会社の社員」からは被害届が出ていたはずである。

この事件を精力的に追及した『正論新聞』の三田一夫社長は、高野氏に次のように語っている。
「あの『毎日』の記事は、火消しの記事だ。つまり、山崎が捕まっていない段階で一方的に架空の大サギ劇と断定し、山崎だけを悪者に仕立て上げようとするものだ」。
三田一夫氏は、富士製鉄への融資は、実際に行われた、という見方に立つ。

実働部隊が、山崎勇、禰宜田貞雄、野崎正良、猪島リツらで、参謀格が、河野高徳というブローカー。
その上層に、興銀、大蔵省の次官・局長クラス、アメリカなどのユダヤ・グループがいて、融資が決定した。
ところが、山崎の動きが派手すぎたので、最後の詰めは、上層グループと永野重雄社長との間で行われ、交渉に当たった藤木専務も山崎グループもツンボ桟敷に置かれてしまった、というのが三田氏の推測だった。
富士製鉄事件は、全日空の大庭社長が辞任に追い込まれてからわずかに3カ月後に起きている。「

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