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2009年4月15日 (水)

研究対象としての「M資金」

ミニ統一地方選といわれる選挙が各地で行われている。
秋田県知事選では、民主党県連が支持していた候補者・川口博氏が、自民党県連と社民党が支持していた佐竹敬久氏に敗れた。
千葉県に続き、民主党は知事選で2連敗ということになる。

川口氏の敗北については、知名度において、秋田市長を務めた佐竹氏の方が高かったこと、野党側が分裂したことなどの要素があった。
しかし、小沢民主党代表の政治資金問題の影響も与ったとせざるを得ないだろう。
民主党は、選挙対策の見直しをせざるを得ないのではないかと思う。

政治資金問題の影響ということは、検察の捜査の影響ということでもある。
検察の判断は、結果として政権交代ムードに水を差すことになった。
検察の判断が的確なものであったのか否か、後世に問われることになろう。
ロッキード事件においても、今日の時点で振り返れば、田中角栄無罪論はかなりの説得性を持っているように感じられる。

ところで、ロッキード事件の裏には、「M資金」問題があった。
全日空では、ダグラス社のエアバス導入を目論む大庭社長派と、ロッキード社のトライスターを導入したい若狭副社長派の間で、激しいつば競り合いが繰り広げられていた。
資金面で優位に立ちたいと考えた大庭が焦って、3000億円とされる「M資金」融資話に乗ってしまい、墓穴を掘ったことになる。
その背景には、ロッキード社の秘密エージェントだった児玉誉士夫の策謀があった(09年2月24日の項)。

青山学院女子短大の渡辺良智教授が、同大学の紀要に「M資金伝説」(9812)という論考を掲載している。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000468139/
おそらく、「M資金」が学術的な対象となっている唯一の例ではなかろうか。
渡辺教授は、噂や流言の発生・伝播・受容等に関して研究している社会学者である。
「M資金伝説」は、戦後の日本社会における流言の1つとして捉えられている。

渡辺教授は、以下のように問題意識を説明している。

「M資金」は、連合国軍総司令部(GHQ)の科学経済局(ESS)長、マーカット少将の頭文字を取って名付けられた、日本の戦後経済復興に秘密裏に使われた巨額資金といわれているが、マッカーサー資金ともいわれる。さらに、ユダヤ資金、オイルダラーなどを資金の出所とするM資金話が登場している。
このM資金については、実体はなく、世界経済史上「奇跡」といわれる戦後日本経済の復興がこうした資金の存在を信じさせている背景となっており、この心理につけこみ、詐欺をするM資金ブローカーが続出しているので、M資金は幻の巨大融資話の代名詞であるというのが、新聞や週刊誌の解説である。
この説によれば、M資金は、虚偽の情報を流布するデマということになり、詐欺事件にひっかかって経営者らが辞任したと報じられる。だが、戦後半世紀を経た現在でも、「デマ」であるM資金話が繰り返し広まっているのは何故なのか。M資金話に中小企業だけでなく大手企業の経営者らが引っかかっているのは何故なのか。やはりM資金話は全くの「デマ」ではなく、経営者らにM資金の実在を信じさせる何かがあるのではないかとも考えられる。

渡辺教授は、噂・流言を「真偽が確認できない情報」と定義する。
そして、特別に寿命の長い流言・噂という意味で、「伝説」という用語を使っている。

渡辺教授は、M資金伝説の誕生の背景要因として、日本の戦後の歴史を指摘する。
M敷金実在論者は、アメリカの日本占領に伴って発生したと考えられる各種の秘密資金が実在しており、この秘密資金が、M資金話になったと一部の人に信じられている、としている。

渡辺教授の挙げている秘密資金は以下のようなものである。
(1)マーカット資金
(2)四谷資金
(3)キーナン資金
(4)G資金
(5)X資金
(6)蓄積円

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