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2009年4月25日 (土)

東急電鉄事件と日本会

TVの討論番組のコメンテーターとして活躍している高野孟氏の『M資金-知られざる地下金融の世界』日本経済新聞社(8003)が刊行されてから、既に30年近くが経過している。
M資金詐欺に関する情報は、コトの性質からして、公開されるものは少なく、噂として、あるいは秘密のベールに包まれた形で流通しているものが多い。
上掲書は、古書市場でも未だに高額で取引されている文字通り洛陽の紙価を高からしめている書といえよう。

M資金詐欺の被害にあったという案件も、その内容の詳細が明らかにされているものは少ない。
渡辺良智「M資金伝説」(9812)で取り上げられている代表的なケースについては、09年4月17日の項で紹介した。
高野氏の上掲書では、渡辺教授の取り上げている事件以外の著名なM資金詐欺事件として、「東急電鉄事件」が紹介されている。

東急電鉄の巨額融資事件は、昭和50(1975)年5月に表面化した。
東急グループは、環太平洋戦略の中核プロジェクトとして、オーストラリアのヤンチェップ地区で、大規模宅地開発を行っていた。
約260万平米の宅地を開発・分譲し、レジャーランドや工業都市建設に拡大していこうという壮大なプロジェクトだった。
その担当が、東急グループの総帥・五島昇社長の側近の酒井辛一常務だった。

これだけのプロジェクトを実施していくためには、当然巨額の資金需要が発生する。
五島昇の密命を受けた酒井は、ホテルに滞在して資金工作を行ったが、その話がたちまちブローカーの間に広まり、さまざまな人が接触してくるようになった。
その中の何人かのブローカーに、酒井は3000億円の融資を依頼した。

そのうちの1件の話がまとまって、昭和50(1975)年2月12日に、日本長期信用銀行の行内で契約する段取りになった。
ところが、その場に酒井常務が現れなかったのだ。
仲介者の佐藤竜三という人物が、面目をつぶされたとして、酒井に詫び状を書かせた。
その詫び状がコピーされてブローカー間に出回った。

さらに、酒井の筆跡の「2兆円融資依頼書」のコピーも流れ始めた。
これは、金額と日付が偽造されたものだという。
これらのコピー類を手にした総会屋やブラック金融筋が東急本社に押し寄せた。
マスコミの取材も始り、対策に窮した東急本社は、酒井の個人的な責任として、この年5月の株主総会で、酒井を退任させてしまう。

五島昇の父の慶太が、東急を戦前のままに維持できた裏には、資金工作があったのではないか、という説がある。
ESSのマーカット少将の私設顧問的立場にあったといわれており、M資金につながるというのである。

酒井常務のもとへ融資話を持ち込んだグループの中に、「日本会」という団体があった。
古田重二良日大会頭の提唱で、昭和34(1959)年に設立された社団法人で、初代会長が古田、総裁が佐藤栄作、二代目会長が山岡荘八、総裁が福田赳夫である。
古田重二良は、われわれの世代には、全共闘運動の発火点となった日大のボスとして懐かしい名前である。

この佐藤栄作と古田重二良の2人で作られた「日本会」が、得体の良く分からない資金を動かしていた、という風評があった。
上掲書の執筆された当時、古田も二代目会長の山岡荘八も既に故人で、村田五郎という人物が会長となっていた。
村田は、戦前の内務官僚で、「国民政治協会」の顧問として、自民党の資金作りに貢献したとされる。

つまり、「日本会」は、日大コンツェルン、自民党=国民政治協会、旧内務省人脈という脈絡の中に存在しており、表の世界から裏の世界に入っていくマンホールの1つという見方もある、ということである。

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