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2009年3月17日 (火)

西松建設献金問題に対する捜査態勢をどう見るか?

「日経ビジネスオンライン」3月17日号に、郷原信郎という人が、『「ガダルカナル」化する特捜捜査/「大本営発表」に惑わされてはならない」という興味深い記事を寄せている。
郷原氏は、桐蔭横浜大学法科大学院教授・コンプライアンス研究センター長で、以下のような履歴の人である。

1955年島根県生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事などを経て、2005年から現職。「不二家問題」(信頼回復対策会議議長)、「和歌山県談合事件」(公共調達検討委員会委員長)など、官庁や企業の不祥事に関与。主な著書に『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)のほか、不二家問題から事故米不正転売問題まで食品不祥事を幅広く取り上げた『食の不祥事を考える』(季刊コーポレートコンプライアンスVol.16)など。近著には『思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)がある。

東京地検特捜部に所属したこともある郷原氏は、現在進行中の西松建設献金問題をどのように見ているか?

第一に、「今回の検察の強制捜査着手は、これ程までに大きな政治的影響が生じることを認識したうえで行われたのではなく、むしろ、検察側の政治的影響の「過小評価」が現在の混乱を招いているように思える」としている。
つまり、「国策捜査」というよりも、検察の想定外の事態が起きてしまった、ということである。

その論拠は?
郷原氏は、今回の強制捜査着手後に、東京地検の特捜部以外の他の部のみならず、全国の地検から検事の応援派遣を受けて行われている事実がそれを示しているという。
検事の異動も、年度によって行われることが多い。
つまり、年度末は、事件の引き継ぎの準備を行いながら、捜査・公判の日常業務を処理しなければならない忙しい時期である。
さらには、5月から懸案の裁判員制度が施行される。
このような時期に、特捜捜査に大規模な戦力投入が行われていることで、検察の他の業務に重大な影響が生じている、と郷原氏は推測する。

そういう事情があるにも拘わらず、捜査体制の増強を行ったのであれば、よほどの事情があるからであろう。
よほどの事情とは何か?
それは、強制捜査に対する民主党サイドの猛反発、強烈な検察批判などによって、検察が想定していた以上の大きな政治的・社会的影響が生じてしまったということではないだろうか。
郷原氏は、批判をかわすため、泥縄式に捜査の戦線を拡大しているということではないか、という。
もし、計画的に他地検への応援要請が必要と考えていたのであれば、強制捜査着手の時期は別に設定されていたはずである、というのである。

批判をかわすためにしなければならないことは?
1つは、民主党サイドだけへの偏頗な捜査と言われないように、自民党議員にも捜査対象を拡大させることで、二階経済産業相に捜査が広がった。
次に、小沢氏側に対しても、何かもっと大きな容疑事実をあぶり出すか、秘書の逮捕事実が特に悪質であることを根拠づけることが不可欠となった。
これらの事情によって、捜査に膨大な人員を投入しているというのが実情だろうと思われる、というのが郷原氏の見方である。

郷原氏は、今回の政治資金規正法違反容疑に関しては、、「寄附者」をどう認定するかという点に関して重大な問題があるとする。
献金の名義とされた西松建設のOBが代表を務める政治団体の実体が全くないということでなければ、大久保容疑者が西松建設の資金による献金だと認識していても収支報告書の虚偽記載罪は成立しない。
そして、今回の政治団体には事務所も存在し、代表者のOBが常駐し、一応活動の実態もあったという情報もあるから、団体としての実体が全くなかったことの立証は容易ではなさそうだ、とする。
郷原氏は、資金の拠出者の企業名を隠して行われる政治献金が、政治資金の透明化という法の趣旨に反することは明らかだが、そのことと犯罪の成否とは別の問題だ、という。

つまり、現在の政治資金規正法は、巷間言われているように「ザル法」であるのだろうが、「ザル法」といえども法律である以上、捜査は厳格な法解釈の制約内で行わなければならない、ということである。
ほとんど確実に政権交代が想定される状況の中で、政治に関する事件の処罰が恣意的に行われるとすれば、それは検察の不当な政治介入と言わざるを得ないのではないか。

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