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2009年3月18日 (水)

特捜捜査の「ガダルカナル」化?

郷原信郎氏の、『「ガダルカナル」化する特捜捜査/「大本営発表」に惑わされてはならない』(「日経ビジネスオンライン」3月17日号)という記事をもう少しみてみよう。
郷原氏が、「ガダルカナル」化というのは、以下のような捜査状況を指している。

自民党サイドへの捜査も、逮捕事実の悪質性を根拠づけるための捜査も順調に進んでいるとは到底思えない。特捜部の捜査は、戦略目的も定まらないまま、兵力を逐次投入して、米国軍の十字砲火の中に白兵銃剣突撃を繰り返して膨大な戦死者を出し、太平洋戦争の戦局悪化への転換点となったガダルカナル戦に似た様相を呈している。

ガダルカナル戦について、Wikipedia(09年2月25日最終更新)を参照してみよう。

ミッドウェー海戦とともに、太平洋戦争における攻守の転換点となった戦闘とされている。一般に、ガダルカナル戦は日本軍が米軍の物量に圧倒されて敗北した戦いと認識されている。川口支隊の敗北までの時点で、その点を冷静に判断し、兵を引いていれば、その後の泥沼のような消耗戦で何ら得るところなく戦力と継戦能力をすりつぶす事態は避けられたと考えられる。

ガダルカナル戦の死者・行方不明者は2万人強と推定されているが、このうちの約1万5千名は、餓死と戦病死(事実上の餓死)だった。
しかし、国民には敗北の事実は隠されていた。

上記Wikipediaによれば、以下の通りである。

撤退は「転進」という名で報道された。そのため、撤退した将兵も多くはそのまま南方地域の激戦地にとどめ置かれた。この悲惨な状況について国民が知り得たのは大本営発表の次の一文のみであった。
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ソロモン群島のガダルカナル島に作戦中の部隊は昨年8月以降、激戦敢闘克く敵戦力を撃摧しつつありが、その目的を達成せるにより、2月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり
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郷原氏は、捜査状況が「ガダルカナル」戦のような泥沼的状況に陥りつつある一方で、報道のあり方について、次のように指摘している。

質問・疑問に答えることも、批判・反論を受けることもないという点では、捜査機関側の会見などの正式な広報対応に基づく報道とは決定的に異なる。当局にとって都合の良い情報だけが一方的に報じられるという点で、むしろ、戦時中の「大本営発表」とよく似ていると言うべきであろう。
……
太平洋戦争中の日本では、連日、「大本営発表」によって、帝国陸海軍の戦果ばかりが報じられた。ミッドウェー海戦での海軍の大敗、ガダルカナル戦での陸軍の大敗を機に戦局が急速に悪化していることは全く報じられなかった。
そして、大本営発表による華々しい戦果ばかりを聞かされていた日本の国民は、戦況を客観的に認識することもできず、「帝国陸海軍の不敗神話」を信じ破滅的な敗戦に巻き込まれていった。

現在、「100年に1度」というような深刻な経済危機を迎えている。
外需依存によって発展してきた国の存立基盤が揺らいでいるといってもいいだろう。
そういう状況の中で、現在進行中の特捜捜査は、政治の世界を混乱に陥れている。
あるいは、バブル崩壊後の最安値を更新した証券市場の深刻な事態から、国民の目を逸らさせる結果になってもいる。

政治資金規正法は、政治とカネとの関係を透明化する趣旨のものだろう。
とすれば、郷原氏の言うように、捜査当局は重大な政治的影響を与えながら捜査を行っている以上、可能な限り捜査機関側も、透明化を図るべきで、説明責任が求められるのは当然だ、ということになる。
郷原氏は、残念ながら、現在まで検察はその責任を全く果たしておらず、その代わりに行われているのが、捜査の成果を一方的に報じる「大本営発表」だ、と言う。
報道機関は、「大本営発表」に一方的に依存するのでは、東亜・太平洋戦争時の報道体制と何ら変わるところがない。

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