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2009年3月22日 (日)

ロッキード事件⑭…推定無罪という法理

平野貞夫『ロッキード事件「葬られた真実」』講談社(0607)は、30年という歳月は、ロッキード事件の真実を闇の中から引っ張り出してきた、とする。
つまり、葬られた真実が、白日のもとにさらされた、という趣旨である。

その葬られた真実の第一は、児玉誉士夫の証人喚問に関する陰謀である。
その陰謀に加担した黒幕は、中曽根幹事長である、と平野氏は指摘する。
また、三木首相に「刑事訴訟法47条但書」の知恵を授けたのは、衆院法制局の局長だった。
前尾繁三郎衆院議長は、三木首相による解散・総選挙を阻止し、一方で角栄による「三木おろし」=総辞職を許さず、衆参両院議長裁定で国会を正常化した。

解散もなく総辞職もなかったからこそ、検察は刑事免責を条件とした嘱託尋問を行って、角栄逮捕に執着した。
田中角栄は、政権のトップ=三木首相、国会のトップ=前尾繁三郎衆院議長、自民党のトップ中曽根幹事長、司法のトップ=東京地検特捜部によって包囲された、四面楚歌の状態だった。
角栄は、自分の包囲網に無頓着だった。
結果として、包囲網は、角栄を潰すまで狭められていった。
平野氏によれば、田中角栄は「無罪」とは断定できないが、法理的には、「推定無罪」であって、せいぜい疑惑の政治家としてマスコミい叩かれる程度で済んだのではないか、という。

平野氏は、上掲書の「あとがき」で、次のように書いている。
田中角栄は、2つの意味で無罪ではなかったか?
1つめは、ロッキード裁判で、日本の法制度にない「司法取引」と同等のものが導入されたことである。
アメリカ側への嘱託尋問を行い、証人が罪に問われることがないことを保証したうえで、彼らの証言から得た内容を証拠として採用し、角栄は有罪になった。
罪を問われることがないとしたら、証人は司直の言うとおりの話をしたとしてもおかしくないだろう。
この辺りの実相は不明である。
しかし、このような刑事免責を前提とした嘱託尋問が、法理論的には間違っているということを、後に最高裁自らが認めている。

平野氏は、民主党代表の小沢一郎が、『90年代の証言 小沢一郎 政権奪取論 (90年代の証言)』朝日新聞社(0606)において、角栄の裁判をすべて傍聴したあとに感想として、「ロッキード裁判は、司法の自殺行為」として、次のように語っていることを紹介している。
第一に、角栄が受け取った5億円を見た人がいないこと。
ロッキード社のコーチャン副社長、クラッター元東京支社長、丸紅の大久保利春専務らの誰もお金を見た人はいない。
最高裁判所は、裁判官会議によってコーチャンに免責特権を与えて嘱託尋問を行ったが、日本の司法には、司法取引による刑事免責などの仕組みはない。
田中角栄は、自分(小沢一郎)にとって、反面教師だった。
しかし、彼だけが責められてほかのことはねじ曲げられてもいい、という非論理性が、日本人のいけないことではないのか?

いま、小沢一郎氏は、西松建設による違法献金問題の渦中の人となっている。
平野氏は、次のように言う。
世界の司法の基本は、「推定無罪」であり、「疑わしきは罰せず」にある。
しかし、角栄の場合、「恣意的有罪」を与えられたのではないか?
角栄の愛弟子ともいうべき小沢一郎民主党代表が、いままた恣意的有罪を与えられようとしているのでないだろうか、という疑問が、少なからぬ人から問いかけられている。

平野氏の角栄無罪論の2つめは、「人道的無罪」論である。
平野氏は、角栄は「裏日本」と呼ばれた日本海側を豊かにしようと立ち上がり、傾斜配分型の予算執行をした。
田中角栄は、「裏日本」が貧しさから脱するまでは、大きな役割を果たしたが、ある程度の発展を遂げてからは、その役割を終えてしまった。
ニクソン大統領に対して、佐藤栄作首相は、「次の首相は、東大法学部を出た福田赳夫で、学歴のない田中角栄ではない」と発言していた。

つまり、平野氏は、エスタブリッシュメントによる「国策捜査」の危険性を指摘しているのである。
私大出身で地盤もない鈴木宗男。ノンキャリ外交官であるが、プーチン大統領誕生を世界に先駆けてつかんだ佐藤優。
彼らは、エスタブリッシュメントにとっての格好のスケープゴートになった。
小泉純一郎の「構造改革」の抵抗勢力という敵役のシナリオを押し付けられることになったのだ。
検察の捜査が国策の一環であることは否定できないにしても、それが恣意的に行われることが繰り返されないことを願う。

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