ロッキード事件⑫…中曽根幹事長の証人喚問の茶番性
児玉誉士夫が証人喚問を受けた場合、最もダメージを受けるのは誰か?
それは、児玉との繋がりの深い中曽根康弘幹事長であった。
その中曽根幹事長が、積極的に「児玉喚問」を推し進めるというように態度を変えた。
何が中曽根の判断を変えたのか?
結局、児玉誉士夫は、「病気」を理由に、喚問に不出頭ということになった。
国会から派遣した医師団も、「児玉が病気で出頭に堪えられない」ことを認めた。
医師団が故意に違った診察結果を発表することはあり得ない。
それにしても、タイミングが良すぎる病気である。
メモ魔・平野貞夫氏は、詳細なメモを書いていた。
その「平野メモ」と天野恵市氏の『手記」を照らし合わせると、陰謀の実態が浮かび上がってくる。
天野氏の手記は、2月16日の午前中の時点で、「医師団派遣が本日中にある」と確信していた。
平野メモでは、16日中の医師団派遣が決まったのは、午後7時だった。
このことは何を意味しているか?
児玉を証人として喚問させないための政治謀略があったとしか考えられない。
そして、それを仕組めた人物は、1人しかいない。
中曽根康弘自民党幹事長である。
4月13日に、衆院ロッキード問ダインに関する特別委員会は、中曽根の証人喚問を行ったが、茶番というしかない事態であった。
特別委員会の委員長は、中曽根の忠臣の原健三郎だった。
そして、原委員長は、委員長でありながら自民党を代表して尋問するという前代未聞のことをやった。
中曽根証人の正当性を一方的に証言させるものであった。
八百長以外のなにものでもない。
中曽根は、リクルート事件にも登場する。
しかし、この時も、事実上の捜査終了後に証人喚問に応じるという不条理なことをやってのけたのだった。
重大な疑獄事件から政治家が逃れることを放置してきたのが、日本の政治であり、司法だったのである、と平野氏は嘆く。
「かんぽの宿」で露呈した疑獄の真相も、西松建設の違法献金という大本営発表の流れの中で、闇に葬られてしまうということなのだろうか?
平野氏は、捜査当局が中曽根への追及を手控えたのは、自民党政権が崩壊してしまえば、政権を担当しうる政党が日本に存在しなくなると恐れたからではなかろうか、と推測している。
捜査当局の判断で、被疑者への追及の姿勢が変わってくる事例があった、ということである。
平野氏は、捜査当局のそのような姿勢を、エスタブリッシュメントの、勝手な思い込み、驕りと批判している。
仮に、現在進行中の西松建設献金問題の捜査手法に、政権交代が好ましくないという思い込みによる影響があるとすれば、それはやはり驕りと批判されなければならないだろう。
ロッキード事件において、三木首相は「正義の味方」としての立場を演じた。
そのハイライトは、「刑事訴訟法47条但書」である。
三木首相に、この知恵をつけたのは誰だったのか?
平野貞夫『ロッキード事件「葬られた真実」』講談社(0607)では、衆院法制局のOBの証言として、衆院法制局にいた川口頼好という名前を上げている。
ロッキード国会の攻防には、さまざまな形で高級官僚の意向が反映していたということになる。
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