« 特捜捜査の「ガダルカナル」化? | トップページ | ロッキード事件⑫…中曽根幹事長の証人喚問の茶番性 »

2009年3月19日 (木)

ゼネコン捜査は無謀な「白兵突撃」になるか?

東京地検特捜部が東北地方の大手ゼネコンなどの一斉聴取に乗り出したことが報じられている。
例えば以下の通りである。

準大手ゼネコン「西松建設」から民主党・小沢代表の資金管理団体「陸山会」への違法献金事件に絡んで、東京地検特捜部は、ゼネコン各社側から小沢代表側への献金システムの全容を解明するため、代表の地元・岩手県など東北地方の建設業者らから、参考人として一斉に事情聴取を始めた。
http://www.asahi.com/national/update/0311/TKY200903110285_01.htm

郷原氏は、このような報道も「大本営発表」を流すだけだと断じている。
そして、この捜査の背景に、検察は談合構造の存在を想定しているが、この「迂回献金」や公共工事を巡る談合などに関する小沢氏側の新たな犯罪事実を立件できる可能性はほとんどないと言ってよいだろう、としている。

どうしてか?
郷原氏は、次のように説明している。
第一に、「迂回献金」は、政治資金の寄附行為者の開示だけが義務づけられ、資金の拠出者の開示を求めていない現在の政治資金規正法上は違法ではない。
第二に、2005年の年末、大手ゼネコンの間で「談合訣別宣言」が行われ、2006年以降は、公共工事を巡る談合構造は一気に解消されていった。
現時点では2006年3月以前の談合の事実はすべて時効が完成しているので、談合罪など談合の事実自体の立件は考えにくい。
第三に、談合構造を前提にした「口利き」などでのあっせん利得罪の時効期間も同じであり、立件は考えられない。

とすれば、ゼネコンへの捜査は何を意図しているのか?
郷原氏は、小沢氏の秘書が悪質だったことを根拠づける証拠の収集のための捜査としか考えられない、とする。
報道されている「大本営発表」によれば、東北地方の公共工事を巡る談合構造の下での受注者の決定に大久保容疑者が強い影響力を持っており、従って小沢氏側への政治献金は、談合受注の見返りの趣旨だったことを明らかにすることで、逮捕容疑となった西松建設側からの政治献金が実質的に贈収賄に近いものだったという事件の悪性を立証することにあるようだ、という筋書きである。

しかし、郷原氏は、ゼネコンの談合構造はきわめて複雑であって、この筋書きを立証することはきわめて難しいだろう、としている。
つまり、ゼネコン間の談合構造の下での公共工事の受注者決定は、受注希望の有無、技術力、経営規模、同種工事や近隣工事の受注実績、発注者への協力の程度など様々な要因を考慮し、さらに、自治体の首長や有力政治家の意向なども考慮して受注予定者を絞り込んでいくというものである。
この中での個別の工事の受注と、個別の政治献金との対価関係は、必ずしも直接的なものではない。
朝日新聞などでは、岩手県内のダム工事の一部を西松建設が受注したことと逮捕容疑の小沢氏側への政治献金の関係を問題にしているが、国土交通省発注の工事について、発注者側への影響力を有しているとは思えない野党側の小沢氏側に、果たして、談合による受注者の決定に影響を及ぼすことが可能なのであろうか、と疑問を呈している。
総工費2000億円を超える巨大なダムでは、10年以上も前からの企画・設計の段階で、ゼネコン側から発注者への協力が行われ、その積み重ねが落札につながる。
入札に近い時期の政治献金が直ちに受注に結びつくような単純な話ではない、ということである。

上記のような認識のもとに、郷原氏は以下のように書いている。

このように考えると、東北地方のゼネコン関係者の一斉聴取によって、逮捕容疑の政治資金規正法違反の悪性の立証につながる証拠の収集に関して具体的な「戦果」が挙がっているとは考えられない。
しかも重要なことは、ゼネコン間の談合構造は2006年以降解消され、その後は、むしろ、猛烈なダンピング競争になっているということだ。「過去の遺物」となった談合構造を、3年以上も経った今になってあたかも現在も続いているかのように問題にされるのは、経済危機による深刻な経営悪化にに直面する大手ゼネコンにとって迷惑極まりない話だ。

つまり、検察庁は、ガダルカナル戦における日本軍と同じような失敗をしようとしているのではないか?
また、検察情報を「大本営発表」の如く垂れ流しているマスコミも、同じ失敗を繰り返そうとしているのではないか?

|

« 特捜捜査の「ガダルカナル」化? | トップページ | ロッキード事件⑫…中曽根幹事長の証人喚問の茶番性 »

ニュース」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

小沢好き嫌い?小沢正しい悪い?とかいう低次元の問題ではないですね。政府(検察)・与党・マスコミがグルになって世論操作で国民をミスリードし、政権交代を阻止しようとしているわけです。永田町に競争の原理を導入して政治を改善するには、一回政権交代して民主党を利用して自民党を潰さないとどうしようもありません。西松小沢疑獄でわかったことは読朝毎産NHKごときは政府与党大企業の広報資料を垂れ流すだけの体制翼賛報道機関であり、報道機関というよりはむしろ政府外郭広報団体とでもいうべきものです。当然欧米のマスコミとは以て非なるものだということがよくわかりました。まともな日本人は今後一切読朝毎産NHKを信用してはなりません。自民党嫌いだけど支持政党なしという人は結局自民党と間接キスしてるだけです。政府与党に血税の浪費をやめさせたければ、とにかく投票所に行って野党に一票入れるしかありません。それが議会制民主主義というものです。

投稿: ポンコツ日本人 | 2009年3月20日 (金) 02時25分

ポンコツ日本人様

仰るとおりだと思います。
私の周りにも、「自民党はダメだと思うけど、小沢さんも……」という人が結構います。政権交代のための現実的な選択肢が民主党しかない状況では、結果として自民党政権を延命させているわけですが、そのことには無自覚です。
政権交代によって何が起き、何が変わるのか?
やはり一度は交代させてみるべきでしょう。
「大本営発表」を批判的に捉えないと、戦時下の国民と同じ思考になってしまいます。情報を批判的に読み取る力が必要だと思いますが、マスコミの作り出すイメージによる先入観から自由になることは、かなり難しいことですね。

投稿: 管理人 | 2009年3月20日 (金) 03時45分

マラソンでいうとゴールまで1メートルのところで刺されたような今回の小沢秘書逮捕。私の会社の仲間達も皆、これっておかしいよねー、、、って言っています。小沢さん、頑張れ!って。秘書が起訴されても辞めないでねーって。まあ、誰でもきな臭いにおいがすると感じているんですよ。皆、異口同音に言うのは、検察も警察も官僚も、小沢さんが選挙で勝ったら、自分達が天下りできなくなっちゃうから、どうしても小沢さんを失脚させたいんだろうね、って。プライドで起訴したいんだろうけど、引くことの勇気が持てたら検察を評価しますけどね。苦しい決断ですものね。

投稿: sacchinn | 2009年3月21日 (土) 18時20分

sacchinn様

まあ、検察もここまで来たら引くに引けないでしょうね。
厳密に法解釈したら、起訴もなかなか難しいんでしょうが。
マスコミが検察情報を垂れ流してる割に、世論はそちらの方に流れていないようですね。
麻生さんじゃだめだ、ってことが共通した理解なんでしょうか?

投稿: 管理人 | 2009年3月21日 (土) 19時12分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゼネコン捜査は無謀な「白兵突撃」になるか?:

« 特捜捜査の「ガダルカナル」化? | トップページ | ロッキード事件⑫…中曽根幹事長の証人喚問の茶番性 »