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2009年3月 8日 (日)

西松建設問題と世論の誘導

西松建設献金問題は、小沢民主党代表から自民党の二階俊博経済産業相に飛び火した。
二階氏が、西松建設から偽名名義の献金を受けていた疑いがあるとのことである。
民主党だけでなく、自民党の派閥の領袖クラスに捜査の手が伸びているのだから、国策捜査などという批判は的外れということになるだろうか?

これからの展開を見ない限り、余り予断を持たないほうがいいだろうが、二階氏などはとうに織り込み済みのことだっただろう。
「実質西松建設」だったとされる政治団体から献金を受けていた政治家は、もちろん自民党にもいた。
笑えるのは、これらの人たちが、小沢氏の秘書の逮捕という事態を受けて、献金を返却しようとしていることである。
朝日新聞のネット配信記事(09年3月5日)から引用しよう。

小沢民主党代表の公設第1秘書の逮捕を受けて、西松建設OBが代表を務める政治団体から献金を受けるなどしていた自民党議員が5日、相次いで全額返還を決めた。森喜朗元首相は政治献金300万円とパーティー券代100万円、山口俊一首相補佐官は献金200万円、加納時男国土交通副大臣はパーティー券代200万円をそれぞれ返却する。
森氏は5日、朝日新聞の取材に対し、代理人の弁護士を通じて「返還の方策を検討する。道義的観点からであり、違法性を認める趣旨ではない」と答えた。山口氏は「公共事業などを色々研究する所だということなので全く問題ないと判断した。裏で違法なお金を集めていたんだったら、返したほうがいい」と説明。加納氏は記者団に「パーティー券の対価として受け取ったので返還する必要はないと考えていた。両団体の資金作りに違法性が指摘され、関係者の逮捕に及んでいることもあり、道義性に問題があると判断した」と語った。
自民党二階派(会長・二階経済産業相)も5日の派閥例会で、同派のパーティー券代計838万円の全額返還を決めている。

これらの人たちは、返却すれば、「無かった」ことになると考えているのだろうか?
道義的観点というのも理解し難い説明だが、返せばいいでしょう、という姿勢がそもそも信用を失わせるものだと思う。
「語るに落ちる」とは、こういうことを言うのではないだろうか。

捜査対象に加わったとされる二階氏は、小沢民主党代表が自民党に在籍していた時代には、小沢側近と言われていた人である。
何かと疑惑を向けられることが多い人なので、「やっぱり」という感じを持った人も多いだろう。
つまり、角栄の系譜は、カネまみれか、と。

確かに、金権体質的であることは事実だろう。
しかし、ロッキード事件からの連想では、どうしても角福戦争の残照というイメージになってくるのを拭えない。
角福戦争とは、佐藤栄作元首相の後継の位置をめぐって、田中角栄と福田赳夫とが死闘を演じたことを指す。
Wikipedia(08年6月25日最終更新)では、次のように説明している。

過去戦後政治史において吉田茂と鳩山一郎、池田勇人と佐藤栄作の政争はあったが「戦争」とまで形容されることはなかった。田中と福田の抗争の激しさはお互いの(及びそれぞれの支持層の)出身階層の相違によるある意味で擬似階級闘争の様相を呈していたことの表れともいえよう。
……
総裁選には田中、福田、大平、三木の4人が出馬し各々156、150、101、69ずつの票をえて田中と福田の決選投票になり田中282、福田190で田中が佐藤の後継となった。出馬しなかった中曽根康弘にはこの時7億円の資金が田中から流れたと言われている。

上記の「擬似階級闘争」というのは、福田赳夫が東大から大蔵省を経て政界に入ったというエリートであるのに対して、田中角栄がさしたる学歴も持たず、一介の土建業から成り上がったからである。
こうした事情からすれば、田中角栄の官僚掌握力は別として、本来的に福田派の方が官僚に近い存在であるのは明らかである。
検察庁も官僚組織であり、特に予算を握っている財務省には弱いと聞く。
検察の国策が、ビューロクラシーの護持でなければ幸いである。
西松建設献金問題の捜査が、森喜朗氏など清和会関係者に及ぶかどうかが、1つの見どころではないだろうか。

それにしても、何となく釈然としない状況である。
最も利益を得た人間を疑え、といわれる。
今の状況で利益を得ているのは誰か?
西松建設の献金問題で、大きな疑獄事件に発展するかと見えた「かんぽの宿」の問題はすっかり霞んでしまっているかのようである。
とりあえず胸をなで下ろしている人もいるのかも知れない、と邪推しておく。

それにしても、いささか世論誘導的なことが多いのではないだろうか。
西松建設献金問題が自民党に波及せず」と発言した政府高官が、漆間巌官房副長官だったことが判明した。
元警察庁長官である。
麻生内閣で、小沢潰しの人事だとされている人物でもある。
インサイダーの情報が表に出てきたということだろう。
また、検察の誘導としか思えない情報が余りにも多いと思う。
一例として、産経新聞(09年3月8日)の一面トップは、次のような文章である。

小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、西松建設に虚偽名義でパーティー券を購入させていた疑いが浮上している二階俊博経済産業相側が、西松から虚偽名義の政治献金も受けていた疑いの強いことが7日、捜査関係者の話で分かった。

捜査関係者とは誰か?
常識的に考えれば、検察自身かその周辺である。
一般人が知りようのない情報である。
捜査側から恣意的に情報がリークされ、それが世論を形成していくとすれば、恐ろしいことだと思う。

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コメント

 今日(3月16日)の『中日新聞』も「…の疑いがあることが関係者の話で分かった」。「関係者」がその筋(検察)のリークであったとしても、それを裏付けることができたら、「関係者」という表記はしなくともよくなると思うのですが。

投稿: 只今 | 2009年3月 9日 (月) 12時04分

只今様

コメントありがとうございます。
ニュースソースを秘匿するということが言われますが、今回は余りにも不自然に、「捜査関係者」による情報が溢れているように感じます。
「捜査関係者」からリークされる情報を垂れ流すのでは、報道機関の意義を問われることになることになるのではないか、という危惧を覚えます。

投稿: 管理人 | 2009年3月11日 (水) 04時13分

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