郵政民営化に関する疑惑の一側面
昨日(3月9日)、日経平均株価の終値がバブル後最安値を記録した。26年5ヵ月ぶりである(チャートは、日本経済新聞3月10日)。 今日も続落だから、連日の最安値更新ということになる。
麻生内閣支持率が歴史的低水準だと思ったら(09年2月16日の項)、株価も歴史的低水準になってしまった。
現在の株価だと、株価純資産倍率(PBR)は、0.8だという。
つまり、株式市場にある上場株式を、現在の価格で買い占めることができれば(そんなことはあり得ない仮定ではあるが)、全部を清算すれば利益が出るということになる。
しかし、株価収益率(PER)の予想値は約69倍で、こちらからすると割高という判断になる。
PERは、半年前には約15倍だった。
また、アメリカでは約10倍である。
収益性の見通しが急降下していることになる。
政治も経済も混迷を極めていると言わざるを得ないだろう。
昨日、「かんぽの宿」売却に際して、日本郵政がアドバイザリー契約を結んだメリルリンチ日本証券の役割は何だったのか、と疑問を書いた。
その解答の一部が、発売されたばかりの「文藝春秋09年4月号」掲載の、東谷暁『竹中平蔵、西川善文、宮内義彦3氏の「お仲間」資本主義』という論文に示されていた。
上記の東谷論文から、メリルリンチ日本証券が「企画提案」を望む企業に配った文書の記載を引用する。
日本郵政は、本件譲渡の実行を約束するものではなく、その裁量により、いつの時点においても、理由の有無・内容を開示することなく、本プロセス及び本件譲渡を変更又は終了する権利を有し、その単独の意志により、本件譲渡の対象となる施設等の範囲を変更できるものとします。
ずいぶん一方的な文章ではないだろうか?
私が「企画提案」しようとしている側ならば、この文章を読んだら、前に進む気がなくなったことだろう。
実際に、当初は27社あった入札希望者が、順次減少して2社になり、その後は個別に条件交渉に入ったのだという。
誰が考えても出来レースと思うだろうが、そういう事情を知らない限り、「かんぽの宿」はお荷物の不良資産で、無事処理できて良かった、などと考えてしまうだろう。
メリルリンチ日本証券が得るはずだった成功報酬が、売却額の1.4%で、最低保証として6億円という契約だったという。
上記のような一方的な条件を押し付けるのが役割だったとすれば、6億円というのもそれに見合う報償だと考えるべきだろうか?
つまり、日本郵政は、このような高額の報酬を支払ってまで、「かんぽの宿」を売却したかった?
この6億円の根拠について、日本郵政の伊藤和博資産ソリューション部部長・執行役は、次のように説明している。
売却予定の「かんぽの宿」70件、社宅9件の簿価123億円と、世田谷レクセンターの簿価62億円を合計して185億円。これを概算で200億円とみて、不動産仲介手数料の3%を乗じて6億円。
伊藤氏は、「これはほぼ相場といえる」と語っているというが、「こんな荒っぽい計算で6億円もの報酬を払うのかよ」と、簡保加入者として怒りたくなるのは当然だろう。
また、上記の簿価123億円と、79施設の固定資産税評価額856億円の乖離が既に明らかになっている(09年2月22日の項)。
東谷氏の上記論文には、さらに驚くような事実が記載されている。
評価額1万円とされた鳥取県岩美町の「かんぽの宿・鳥取岩井」が、半年後に社会福祉法人に6000万円で転売されていたことについては既に触れた(09年2月1日の項)。
2007年にバルク売り(一括売却)された物件の中には、千円のものがあったというのである。
沖縄県の旧沖縄東風平レクセンターがその1つである。
ここは、落札後約2ヵ月で4900万円で転売されたという。
オリックスへの売却について、転売禁止の縛りは2年間だった。
つまり、2年経てば、上記と同じように転売できるということである。
ここ数日の新聞は、西松建設献金問題で賑やかで、「かんぽの宿」は過去の話題になってしまっている。
月刊誌というスローなメディアのお陰で、改めて「郵政民営化」の実態のごく一部を垣間見ることができたようである。
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コメント
外国のハゲタカやくざの手先になって日本国民の財産を食いまくったあげくに、国権の最高機関である日本の国会の要請を拒否して逃亡した竹中は最悪の売国奴だ。竹中自身はやくざの家来になって国会議員にならせてもらったのに、こんどは国会を足蹴にしてたんまりもらった裏金とともに海外へ逃亡するとは卑劣すぎる凶悪犯だ。こんなやくざの手先をかくまっている郵政暴力団を倒して、売国奴宮内竹中を退治しましょう。
投稿: 日本国民を食い殺している売国奴宮内竹中らを退治しましょう。 | 2009年3月29日 (日) 08時15分