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2009年3月 3日 (火)

ロッキード事件⑥…児玉誉士夫の病状診断

ロッキード事件では、民間旅客機のトライスターだけでなく、自衛隊の次期対潜哨戒機(PXL)の導入を巡っても疑惑がもたれていた。
この件に関して、防衛庁の久保卓也事務次官が、記者会見で、PXLの国産化が白紙還元されたのは、昭和47(1962)年の国防会議の開催直前に、当時の後藤田正晴官房長官、相沢英之大蔵省主計局長が、田中首相同席のもと決めたもので、防衛庁事務当局はその時まで知らなかった、と発言した。
この久保発言は、後藤田・相沢両氏から抗議を受けて撤回し、自ら訓戒処分を受けるが、この発言によって、「児玉ルート」と考えられていたPXL疑惑も角栄マターということになっていった。

ロッキード事件が発覚した2月5日、児玉は既に行方をくらましていた。
留守番役は、「3日から伊豆の温泉に行っているが、保養先まで連絡されては気が休まらない、と連絡先を告げずに出かけた」と答えている。
チャーチ委員会はアメリカ時間の4日から始まったが、その前々日から、「連絡先も告げずに保養に出かける」というのは、偶然だろうか?
ロッキード社から、「秘密代理人」の児玉に対して、「公聴会で名前が出るかも知れない」と連絡があったのではないか?
マスコミは、証人喚問前に児玉に取材をしようと必死に探したが、児玉の行方は不明だった。

12日になると、児玉誉士夫の主治医という東京女子医大の喜多村孝一教授が、「児玉様の症状から判断いたしまして、証人として国会に出頭することは無理です」と記者に語った。
児玉は自宅にて加療中で、面会謝絶だという。
14日に、児玉誉士夫の妻の「睿子」を差出人とする前尾繁三郎宛の書留封書が届いた。
開封すると、児玉誉士夫の「不出頭届」とある。喜多村孝一教授の診断書が添付されていた。
「脳血栓による脳梗塞後遺症の急性悪化状態により……」

16日から証人喚問が始まった。
トップバッターは、小佐野賢治だった。
小佐野は、野党の質問に対して、「記憶にございません」を連発した。
「記憶にございません」は、後に流行語になった。今ならば、流行語大賞間違いなしだろう。
全日空の若狭社長は、トライスターの選定に関し、小佐野の推薦は受けていないと証言し、渡辺副社長も、機種選定途中で軌道修正はしていず、大庭哲夫前社長の交代も関係ない、と断言した。

そういう国会の状況の中で、児玉に対する国会からの医師団派遣が、予算委員会の理事会での話題になった。
「本当に病気なのかどうか、確かめるべきだ」という野党の主張を自民党も了承した。
医師団の構成について、理事会で結論が出ず、前尾衆議院議長に一任する、ということになった。
事実上の選考は、平野氏が担当することになる。
平野氏は、衆院事務局と提携している東京慈恵会医科大学の医局と交渉することにし、医師団の派遣は、16日中になるか17日の午前中になるかわからないので、それだけの時間を確保できる人を条件とした。
上田泰慈恵医大教授、下条貞友同大講師、里吉栄次郎東邦大学教授の3名が選ばれた。

医師団の派遣をいつ行うか?
もし、児玉の主治医の喜多村東京女子医大教授が虚偽の診断書を書いているとすれば、今日(16日)中にそれが確認できれば、17日の予算委員会の証人喚問に間に合う。
午後7時には、当日中の医師団派遣が決定し、各医師に連絡がついて、医師団が世田谷の児玉邸に着いたのが午後10時前だった。
午後11時過ぎ、児玉を診断した医師団から報告が入った。
「重症の意識障害で、口もきけない状態であり、国会での証人喚問は無理……」
驚くべき内容だった。

平野氏は有名なメモ魔である。
自分のメモをもとに、時系列で事象を整理している。
・午後0時11分からの予算委員会理事会で医師団派遣を決定
・午後4時、医師団メンバーが決定
・午後6時前、理事会再開。医師団メンバーを了承
・午後7時、当日中の医師団派遣を決定
・午後10時前、医師団が児玉邸で診断
こういう時系列でみれば、医師団が買収されているような可能性はあり得ず、児玉が口もきけない状態にあることは事実に違いない。

しかし、児玉の動きは、余りにも出来すぎていた。
5日にロッキード事件が発覚した時には、前々日から伊豆へ保養に出かけて連絡が取れなくなっていた。
8日に証人喚問が決定したときには、児玉の所在は不明だった。
12日に、児玉は自宅で高脂血症の悪化によって自宅で倒れ、診察した主治医の喜多村教授は、「茶飲み話ぐらいならできる」としたが、夜になると「口もきけないので国会への出頭は無理だ」と前言を変える。
14日の夕刻には、妻名義で「不出頭届」が書面で送付される。この日は土曜日で、議長が対処できない時間だった。
16日には証人喚問が始まるが、児玉の「不出頭届」の精査は、この日に行わざるを得なかった。
16日の夜10時に国会から派遣された医師団によって、17日の喚問は不可能と診断された。
誰にしても、何らかの謀略があったと考えざるを得ないだろう。

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