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2009年2月 9日 (月)

「かんぽの宿」売却は、競争入札だったといえるのか?

「かんぽの宿」の入札経緯に関する情報が、週刊誌等に掲載され始めている。
私も、この件に関しては、既に3回取り上げている。
1回目(09年1月9日の項)は、「かんぽの宿」がオリックスに一括譲渡されることに、鳩山総務相が「待った」をかけたことをニュースをで知り、「郵政民営化」という大義のウラに、利権のカラクリが隠されていたのではないか、と感じたことを記した。
オリックスは、一種のインサイダー取引によって落札したのではないか、という疑念である。

2回目(1月21日の項)は、竹中平蔵氏が、オリックスを擁護していることについての不信感について記した。
オリックスの宮内氏も竹中氏も言ってみれば市場主義者という仲間内であることは公知のことであり、身びいきは誰にでもあるにしても、いささか露骨過ぎるのではないか、という感想である。
付言すれば、竹中氏の言説は、かつての僚友・中谷巌氏の謙虚(過ぎる?)な姿勢と対比すると、際立っていると言っていいだろう。
「民でできることは民でやる」という御旗のもとに、要するに利権の主体が変化しただけではないのか?
さらに、関岡英之氏などが言うように、郵政民営化自体が、アメリカの「年次改革要望書」に沿ったものだったというのが真相なのだろうか?

3回目(2月1日の項)は、その後に明らかにされつつある情報によって、この譲渡問題に対する疑念が、晴れるどころか一層深まっていることについて記した。
取得(建設)費用と売却予定額とのあまりに大きな乖離、かつて売却した施設の転売の実態等の情報が知らされるようになり、ものの見方や考え方は多種多様であり得るにしても、私の価値観からすると、デタラメとかズサンという概念に近いと言わざるを得ないだろう。

不良債権を早めに処理しようとすることは、一般論としては正しいのだろう。
竹中氏のように、「機会費用」を考えれば先延ばしすることのマイナスが大きいと言われれば、そうかも知れないと思ってしまう。
しかし、取得・建設に2400億円が掛かっているものを109億円で売却することは、正当な選択なのだろうか?
毎年、40~50億円の赤字を出しているというが、「かんぽの宿」に関する財務諸表は、開示されているのだろうか?
40~50億円の赤字が事実だとして、減価償却費はどう計算されて、キャッシュフローはどうなのだろうか?
中小零細企業では、会計上の損益はともかくとして、先ずはキャッシュフローの維持が優先するのが現実である。
運営改善によって、赤字額やキャッシュフローを改善できる余地はどの程度あるのだろうか?
ディスカウント・キャッシュフローで計算した現在価値は、いくらなのだろうか?

もっと素朴に、40億円の赤字を消すために2300億円の損失を出して売却してしまうことが正しい経済学的な判断だとしたら、そういう経済学は人間行動を合理的に説明するものといえるのだろうか?
金額が大きすぎて実感が湧かないので、億を万に変えてみよう。
2400万円でマンションを購入して賃貸しているとしよう。
家賃収入から維持管理費を差し引くと、毎年40~50万円の赤字になっている状態だと説明されているのと同じことである。
例えば、月々の賃貸収入は6万円しかないのに、賃貸収入を確保するための維持管理費に10万円もかかってしまっている、というようなものである。
一体、どんな運営をしているのだろう?
そして、だからといって、109万円でもいいから、取りあえずマンションを手放して、赤字を無くした方がいい、と考えるだろうか?
10万円は掛かりすぎだから、先ずはせめて6万円ギリギリのところまで経費削減できないか、あるいはもう少し家賃を上げる交渉をしてみようか、などとは考えないのだろうか?

「週刊新潮090212号」には、日本リライアンスという不動産会社社長の嶋崎秀雄氏に対する取材記事が掲載されている。
嶋崎社長は、大手不動産会社らと共同事業を組んで、1つのグループとして入札に参加しようとしたという。
メリルリンチ日本証券が売却のファイナンシャル・アドバイザーに選ばれたと聞き、「かんぽの宿」が外資に取られかねないと危惧を抱いたことも、入札に参加することにした1つの要因だと言っている。
まともな日本人の感覚だろう。
メリルリンチの面接を受けた際、「かんぽの宿」の資産査定をして400億円と踏み、融資のシンジケートを組む目途もついていることを説明した。
面接は5分程度で終わったが、“次のプロセスにはお進み頂けないことになりました”と書かれた紙っぺらが入っている封筒が送られてきて、落選したのだという。
嶋崎社長のグループは、1次提案前の予備審査でふるい落とされたわけである。
上記の例でいえば、400万円くらいは出せるが……、と購買意欲のある人が打診してきても、売却のアドバイスを頼んでいる人が勝手に無視してしまったということになるのだろうか?

入札過程では、メリルリンチと守秘義務契約を結んだ後、「かんぽの宿」が年間50億円の赤字だという情報が伝えられ、1次提案に残った22社のうち、15社が辞退したという。
しかし、この赤字には、天下り職員を辞めさせたことによる退職金や、不要な改修工事による費用なども含まれているのだという。
エコノミストの紺谷典子氏は、「かんぽの宿」は、利用率が非常に高い施設で、70%稼動している。ホテル業界では50%の稼働率で元が取れる、と語っている。

「週刊朝日090213号」も、この問題を取り上げている。
0902132同誌に掲載されている経緯を見てみよう。
先ず知りたいのは、メリルリンチ日本証券がアドバイザーに選定された審査経過である。
週刊新潮の記事の日本リライアンス社長ならずとも、外資に取られれてしまうのではないか、と危惧を抱いてしまうようなアドバイザーである。
日本郵政には、そういう判断は無かったのだろうか?

注目されるのは、日本郵政が、こそくな文言の書き換えをしているという指摘だ。
社民党の保坂展人氏らが要求した説明資料で、当初「企画提案」とされていた用語が、最近になって「競争入札」にこっそり書き換えられていたという。
日本郵政の説明は、「今回の手続きは、各応募者からの『企画提案』内容を総合的に審査する『競争入札』によりますので、より適切な表現に変更したものです」ということである。
こういう経緯を知らされると、「かんぽの宿」のオリックスへの譲渡は、実態として随意契約に近いものだったのではないか、という気がしてくる。
疑念を晴らすためには、アドバイザー選定からの経緯を明らかにすべきだろう。
それにしても、日本郵政の開示体制はどうなっているのだろうか?
ウェブサイトのプレスリリースのページには、本件に関しては、08年12月26日付の「かんぽの宿等の譲渡について」という資料しか掲載がない。
これだけの問題になっているのだから、やましいところがないのならば、もっと積極的に情報開示を行うべきではないだろうか。

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