東京湾引揚げの金塊類とユダヤ財閥
安田雅企『追跡・M資金―東京湾金塊引揚げ事件』三一書房(9507)には、新日本党総裁の水谷明が、占領軍が接収した三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の別邸を訪ねるシーンがある。
そこに、国際通信の社長をしていたハンドルマンというジャーナリストがいた。
水谷とハンドルマンは、水谷の妻が新日本党の婦人部長をしたりしていたことから、知り合いになった。
占領軍は、本邸も接収しており、本邸のほうに有名なキャノン機関があった。
キャノン機関とは、WIKIPEDIA(08年10月2日最終更新)によれば以下のようなものである。
キャノン機関(キャノンきかん、the Canon Unit)とはGHQによる占領中の日本にあったGHQ参謀第2部(G2)直轄の秘密機関。名称は司令官であるジャック・Y・キャノン(Jack Y. Canon)陸軍少佐(のち中佐に昇進)の名前から来ている。Z機関(Z-Unit)とも呼ばれている。
太平洋戦争終戦後、キャノン少佐はGHQの情報部門を統括するG2に情報将校として参加。その有能さを評価したG2トップのチャールズ・ウィロビー(少将)がキャノンを首領とする組織を作らせた。 本郷の旧岩崎に本部を構えたキャノンは26人のメンバーを組織した。その他にも多数の工作員を抱え、主に北朝鮮情報の収集に当たる。その後、民政局(GS)との政争に勝利したG2はキャノン機関を日本の左翼勢力の弱体化に利用。1949年の下山・三鷹・松川の鉄道三大事件への関与も疑われた。
1951年、作家・鹿地亘を長期間にわたり拉致監禁してアメリカのスパイになることを要求する鹿地事件が発生。1952年に鹿地が解放された後で、鹿地事件が発覚し、キャノン機関が広く知られることになった。
1953年に鹿地事件の失敗で解任され、キャノン機関は消滅した。キャノンは帰国してCIA入りするがまもなく憲兵学校の教官となり諜報活動から身を引いた。1983年、自宅ガレージで胸に銃弾を2発撃ち込まれ射殺されているのが見つかる。66歳。
キャノン機関は、岩崎本邸の地下室を拷問室として使っていた。
上掲書には、キャノン中佐の、「日本に滞在中に、ロシア、中国、朝鮮、日本人を250人以上殺した」という遺言が紹介されている。
こともあろうに、水谷は最も危険な場所に自ら赴いたわけである。
水谷明は、アメリカに殺されるのではないか、という不安を感じていたことを、上掲書の著者である安田氏に語っている。
水谷の行動が広範に渡っていたので、結果的に身の保全を図ることができたのではないか、と安田氏は推測している。
水谷は、東京湾から引揚げられた金塊類が、ユダヤ財閥に入ったと見た。
ダイヤと金を独占売買しているのは、ユダヤ系のオッペンハイマー財閥で、換金して利子を稼ぐとしたらユダヤ系の銀行に頼むしかないからである。
ロスチャイルド一族の支配する会社の大半は個人企業で、営業報告書を作成する義務がない。完全な秘密が保てるので、利潤の配分が自由に行える。
金塊類は、歴代の権力者やCFR(外交評議会)が自由に動かせたファンドだった、というのである。
GHQの総司令官マッカーサーは、フィリピンに配属されていた時代にフリーメーソンに入会した。
フリーメーソンはいわゆる秘密結社で、その活動内容が非公開であるため、とかく詮索の対象になりがちである。
また、国家の転覆や戦争などを目論むとする陰謀論が唱えられたりするが、組織として政治に係わることは禁じられているという。
しかし、マッカーサーの例に見るように、有力者が会員となっている以上、政治的な影響力も否定できないだろう。
ユダヤ系の団体というわけではないが、ユダヤ人が多いのは事実らしい。
そういう面からして、金融等を通じての国際的な影響力は大きいと考えるべきだろう。
マッカーサーは、ユダヤ人の優秀さを評価していて、部下に多用した。
占領政策として、裁判所法・刑事訴訟法の改正を行ったA・C・オブライヤー、国際検事局のK・シュタイナー検事、マスコミを指導したH・バッシン、副官のバンカー大佐など、GHQの中枢セクションの多くをユダヤ人が握っていた。
日本は、先進国の中で唯一ユダヤに偏見のない国で、ユダヤ人にとって安全地帯だった。
イスラエルがアラブ包囲網の中で新国家建設を進めるための資金として、東京湾引揚げの金塊類をプールしたのではないかと、水谷の側近で、実業界で活躍していた岡十四郎は推測している。
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