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2009年2月 2日 (月)

小説M資金『懲りねえ奴』

田母神元航空幕僚長が紹介に係わったとされる「M資金」問題(09年1月10日の項1月15日の項)は、そもそもが小説的な奇想天外的要素があり、もっと小説化されてもいいかな、と思うが意外と少ない。
その1つが、清水一行『懲りねえ奴-小説M資金』徳間書店(9507)である。

この小説は、まあ清水氏の一連の通俗的な読み物であって、余り品のいい作品とはいえないが、「M資金」を狂言回しにした人間模様が描かれている、ということになるだろうか。
人間模様とは、人間の欲を代表する「金」と「色」で、その「金」の部分を、「M資金」が担当している。
前半部は、法悦会という宗教法人をめぐる詐欺の話で、「国債還付金残高確認証」という証書が小道具として使われる。
大蔵大臣の印があったりして、古典的な「M資金」詐欺ということができる。

後半部は、大東京化学社長の緒方伸也社長をめぐる詐欺話である。
「M資金」の原資は、ブルネイの王族が設定したファンドである。
ブルネイは、石油と天然ガスに恵まれた豊かな国であるが、体制的には王族の支配する前近代的な国家である。
将来的に化学工業に進出するときの備えとして、日本の化学メーカーに資金援助しておこうということで、スルタン資金と称するファンドを設けた。
スルタンというのは、イスラム圏における君主の意味である。
ブルネイは、ボルネオ島北方のイスラム国家である。

WIKIPEDIA(09年1月26日最終更新)では、次のように説明されている。

スルタンの称号を有する国王が国家元首(立憲君主制)だが国王の権限が強化されており、絶対君主制であると言えるだろう。首相は国王が兼任し、閣僚は、国王によって指名される。内閣は、国王が議長となり、行政執行上の問題を処理する。このほか、宗教的問題に関する諮問機関である宗教会議、憲法改正などに関する諮問機関である枢密院、王位継承に関する諮問機関である継承会議があり、国王に助言をする。

そこで目を付けられたのが、大東京化学の3代目社長である緒方伸也というわけである。
大東京化学および緒方社長のプロフィールは、小説では次のように記されている。

(緒方は)日本の代表的な総合化学会社の社長で、単なる社長ではなく、れっきとしたオーナー社長。大東京化学の資本金は一千億円。
会社の総資産は七千億円で、ファインケミカルや、バイオテクノロジーにも力を入れていた。日本では先端技術を持った、すぐれた化学会社であった。
さらに言うと、緒方は婿養子。
東大法学部からニューヨークの大学に留学し、その間日本産業信用銀行の行員として、普通にサラリーをもらっていた。
だが極め付けのトップ頭脳。で、請われて緒方家に入った。
そんなくらいだったから、ソニーやナショナル、ブリヂストンといった日本の代表的会社が、M&Aに手をつけはじめる前、昭和五十五年にアメリカの会社を、六千二百万ドルで買収、つまり“企業の買収・合併”をすでにやっていた。
M&Aにおける日本の先駆者は、緒方伸也だった--。

このような記述を読めば、日本の化学工業界の事情を知っている人間には、どこの会社をモデルにしているか、容易に想起できるであろう。
小説は、創業者夫人の大おばあ様が、詐欺の構図を見破って、詐欺師たちの意図は破綻する。
しかし、次の標的を探して、詐欺話を仕掛けようとする。
「懲りねえ奴」というのは、詐欺師たちのことか、詐欺師たちに騙される側のことか?
「M資金」が確認された事例はないが、「M資金」を信じる人は後を絶たない。

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