小説M資金2『極秘資金』②
長岡哲生『極秘資金』講談社(0801)では、「M資金」は、「基幹産業特別資金(長期保護管理権譲渡資金)」という名前で登場する。
その概要は、次のように説明されている。
財政法第44条及び第45条の定めによって、日本国及び米国の委託管理権者が保有できる特別資金を指し、この資金の一部を管理権者から認められた製造業及び銀行の代表者個人に委譲(長期保護管理権譲渡契約方式)する契約に基づき供せられる資金。
実際に、財政法には次の規定がある。
第四十四条 国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。
第四十五条 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めをなすことができる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO034.html
小説では、「基幹産業特別資金」について、以下のように概要が記されている。
<資金の目的>
日本国基幹産業の育成発展のために特別に供せられるものである。
<資金の対象>
①資本金500億円以上の東証(大証も可)一部上場の製造業及び銀行の代表者個人
②基幹産業であること(建設、不動産、サービス業等は除く)。
<資金額(基準値)>
①製造業は資本金の10倍。
②銀行は預金残高と同額。
③但し、資金者面談により決定。
<資金使途>
事業資金分は資金計画書を提出し、自己裁量分(約10%)は、明確な計画は必要でないが、意見書の提出を求める。
<返済>
必要なし。管理権譲渡契約によって償還義務は発生しない。
<税務>
法務省、財務省、金融庁の承認資金であるため、免責免税特権を有する。
<費用>
資金の委譲を受けるにあたり、一切の費用を必要としない。
資金管理者は、島田剛一という国際外交評論家という設定になっている。
宮本は、逡巡したが、結局元の上司の坂山電機の菅谷代表取締役専務に話を持っていく。
菅谷は、技術系の履歴だが、社内の派閥争いの余波で、坂山興産という不動産子会社の社長に転出する内示が出ており、自分のキャリアにそぐわないので、処遇に不満を抱いている。
そして、自分で、奇抜な発想のベンチャー的な技術者のR&Dをサポートする仕事をしたいという夢を持っている。
例えば、「水で動くエンジン」、「瞬時に超高熱を発するガスバーナー」、「癌やHIVを治す免疫技術」、「水に溶けないといわれた金やチタンなどの物質を溶解する技術」等々であり、それらを「とんでも研究」と名づけ、そのインキュベーターになろうということである。
これらのプロジェクトを遂行するためには、1つの案件でも2桁の億の金が必要になるだろう。
菅谷は、この資金があれば、次々に開発ができることになると夢を膨らませる。
そうなれば、坂山電機のトップも、自分を辞めさせることはできないだろう。
菅谷は、たとえこの話がダメになっても、どうせ坂山電機を辞めるつもりでいたので、ダメ元というつもりで、この話に乗ってみようと考えたのだ。
資金管理者の島田と面談するのに、大手都銀の第一産業銀行本店の役員応接室が指定された。
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